ぴいぷる

【黒田卓也】日本人で初めて「ブルーノート」と契約

2014.04.09


黒田卓也【拡大】

 ジャズトランペッター、黒田卓也の「快挙」は、ジャズ界のメジャーリーグ入りとでもいうべきだろうか。

 日本人で初めてアメリカの名門「ブルーノート」と契約を交わし、今年2月、メジャーデビューを果たした。3月には、アメリカのミュージックチャートのジャズ部門で1位に輝いた。

 「あー、本当に決まったのかと。ずっとメジャーデビューを目標にしてきたのかというと、ちょっと違うし。分厚い契約書を渡されたときに、初めて実感しましたね」

 アフロヘアに少し日焼けした黒い顔。淡々と語るその言葉は、等身大で飾らず、気負いはない。だが、夢に向かって挑戦しつづけてきた者ならではの、力強さがこもる。

 兵庫県芦屋市生まれ。トランペットに出合ったのは中学1年のころだ。

 「体操部の部活を見に行こうと思ったら、途中にブラスバンド部の練習場があった。試しにトランペットを吹いてみたら音がでなくて、それが面白かった」

 神戸市の大学卒業後、2003年に渡米し、ニューヨークのニュースクール大学ジャズ科に進学。3年間学び、卒業後もニューヨークを拠点に音楽活動を続けてきた。

 ジャズの本場で直面したのは、戸惑い、そしてプロの世界の厳しさだったという。

 ニューヨークでは毎晩のように、ミュージシャンがそれぞれの楽器を持ち込んで、即興で演奏する「ジャム・セッション」が行われている。

 「まだ日本の学生だった20歳のころ、ニューヨークに行ったときに衝撃を受けた。あるジャム・セッションで高をくくって『次、行ったろ』とステージに上がったら、2秒で自分が何をやっているのか分からなくなった。周りのレベルの高さに、持っていた自分のトランペットを隠したこともあった」

 ニューヨークの大学を卒業しても、仕事は順調に舞い込んでこなかった。ライブを開いても観客は友人ばかり。譜面を書いたり、人にトランペットを教えたり、頼まれた仕事は何でも引き受けた。

 「もしかしたらダメなんじゃないか…」と思い悩んだ時期もあったが、30歳を目前にしたころ、「もう逃げ場はない。売れなくてもやりたいことをやる」と吹っ切れた。そのころから、日本人とアメリカ人の混成ジャズバンドを編成し、車を借りて、日本全国を回る自前ツアーを始め、それが確かな自信につながっていった。

 一方、10年間におよぶニューヨーク生活は、さまざまな人や音楽の影響を受けるのに、絶好の環境だったという。

 「ずっとブルックリンのアパートに住んでいるのですが、そこに、いろんなジャンルの同世代の人間が集まって、好き勝手に音楽をかけるので、いろんな音楽が好きになった。仕事がないときに、教会のゴスペル、サルサやヒップホップのバンドなどに参加したおかげで、『ジャズはこうでなくては』という概念を捨て去ることができた」

 メジャーデビューも、友人のジャズシンガー、ホセ・ジェイムズとの出会いがきっかけ。共通の友人の卒業発表会でお互いの演奏を聴く機会があり、バンドへの参加を頼まれ、ホセのバンドで演奏するうち、ブルーノート関係者の目にとまったのだ。

 10曲を収録するメジャーデビューアルバム『Rising Son(ライジング・サン)』も、ニューヨークでの“異種交流”が詰まった作品だ。アフロビート、ヒップホップ、R&Bなどいろんな要素を取り入れ、自然と身体が動くようなリズムが強い楽曲となった。伝統的なジャズとは違う、新しい分野への挑戦ともいえる。

 あこがれの人を聞くと、意外な答えが返ってきた。

 「ダウンタウンがめっちゃ好きなんですよ。インタビューを読んだら、若手時代は漫才ブームが去ったころで、漫才をやっていても寝ている客が多かったと。でも、面白いと思うことをやり続けて、彼らはお笑い芸人のステータスまでも変えるまでになった」

 「ジャズは、どうしても難解だと思われがち。いいと思ったものを正しい形で伝えれば、ジャズの世界も広がる。20、30代の若い世代が『きょう暇だから、ジャズでも聞きに行くか』って。そういう会話が普通に聞こえるようになったらいいな」

 ジャズを身近に。挑戦は始まったばかりだ。 (ペン・上塚真由 カメラ・伴龍二)

 ■くろだ・たくや ジャズトランペッター。1980年2月21日、兵庫県生まれ。34歳。12歳からトランペットを始め、中・高・大とビッグバンドに所属。2003年に渡米し、ニューヨークを拠点に活動を行う。自主制作で3枚のアルバムを発表。今年2月、米ブルーノートから、メジャーデビュー作「ライジング・サン」が発売された。

 5月25日に東京・六本木の「ビルボードライブ東京」で、同27日に大阪・梅田の「ビルボードライブ大阪」で公演を行う。東京は16時半、19時半開演、大阪は18時半、21時半開演。

 

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