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【原田美枝子】ますます広がる演技の幅 

2014.05.16


原田美枝子【拡大】

 映画ファンにとって、まごうことなきビッグネームである。10代から巨匠たちに起用されて非凡な才能を発揮。映画各賞の受賞歴を列記するだけで、埋まってしまいそうだ。数々の名作や傑作で人生の修羅場を演じてきた彼女は、女優という仕事をどう考えているのだろうか。

 「若いころは、自分が褒められたい、認められたいという気持ちが先に立っていました。でも30歳を過ぎてから、演じる役の気持ちを、自分の体を通して伝えてあげるのが仕事なのだと思うようになりました。有名な人も名もなき人も、いろいろな女の人がいる。彼女たちにはそれぞれの気持ちがあり、だから代わりにやってあげるね、という感じですね」

 新作の「ぼくたちの家族」(24日公開)で演じるのは、突然、脳腫瘍で余命1週間を宣告される母親役。父親の長塚京三は取り乱し、長男の妻夫木聡と次男の池松壮亮が病院探しに奔走するなかで、妙に明るく笑うお母さんが、深刻なドラマの救いになっている。

 「ははは。あまり意識していませんでしたが、そうかもしれません。お母さんが少女返りしてしまうというか、ブレーキが利かなくなって、何でもどんどん言う。お母さんがおひさまみたいになっていないと、家の中って暗いですよ。だから原作にもあるように『こういうときには笑おうよ』というセリフも生まれてくるのでしょうね」

 これまでの彼女は、気性の激しい女性を主に演じてきた。そのイメージが強烈なので、明るいお母さんは意外だった。

 「脳腫瘍で認知症になるとか、正気を失った状態の演技は、その加減が難しいんです。やりすぎると見る人は醒めて、俳優がいかにも芝居しているだけに見えてしまうでしょ。こんなふうになったときは、どうするんだろうと思いながら見てほしい。まあ、監督のセンスにもよりますね」

 監督は昨年公開の「舟を編む」で映画賞を独占した石井裕也氏。若手監督の中では、演出力が頭1つ抜け出ている。

 「いい意味でオーソドックスですね。ちゃんと目配りして、きちっと撮っている。映像に走る監督さんもいますけど、やはりまず芝居ありきで、その人間が発する何かが結局、一番強いのではないかと思います」

 実生活では、俳優で夫の石橋凌との間に3人の子供がいる。堂々とした母親役が似合っても不思議ではない。

 「私の家は長男がいて下の2人は女の子だから、この映画とはちょっと対応が違う気がします。長男が生まれたとき、この子は天才じゃないかと思うほど親バカ状態になった。2人目、3人目が生まれると、どの子も凄いんだと(笑)。もし子供が1人だけで、私が仕事を持っていなかったら、自分の居場所が見つからなくて、子離れできなくなったでしょうね」

 子供は「授かりものじゃなくて、預かりもの」だと彼女はいう。

 「授かるというと、もらったような気がするじゃないですか。そうではなく、その子が自分の人生を生きていくようになるまで、預かっているのだと思います。私の人生も、子育てをしながら必死にやるという時代は終わったので、子供たちも自分の足で歩いてください、という感じなんですよ」

 ここ数年、演技の幅がますます広がっている。沢尻エリカ主演で話題になった「ヘルタースケルター」では整形外科医、山田孝之主演の「ミロクローゼ」では壺ふりのお竜さん。これまでのイメージを払拭するような役を楽しんでいるように見える。

 「これから年を取っていくと、地味な役が増えていくでしょ。でも自分が楽しいとか面白いと思ってやらないと、見ている人もつまらないじゃないですか。体が動かなくなる前に、動くことをやっておこうとか、年を取ることに絶望しないで面白くやろう、と思いながらやっています」

 1時間のインタビューで最初から最後まで、自然体の笑顔だった。本人に会うまでは、こんなに明るい人だと知らなかったので、ちょっと驚いた。これからはチャーミングなお婆ちゃん役も似合いそうな気がする。 (ペン・垣井道弘 カメラ・財満朝則)

 ■はらだ・みえこ 女優。1958年12月26日生まれ。東京都出身。55歳。74年に映画「恋は緑の風の中」で主演デビュー。18歳だった76年に「大地の子守唄」と「青春の殺人者」で早くも強烈な存在感と演技力を発揮し、ブルーリボン新人賞やキネマ旬報主演女優賞など、映画各賞を獲得した。以後も巨匠たちに愛され、85年に黒澤明監督「乱」、86年に深作欣二監督「家宅の人」、96年に東陽一監督「絵の中のぼくの村」などに出演。映画賞の常連で、98年の「愛を乞う人」では主演女優賞を総なめにした。近作は2012年「ふがいない僕は空を見た」、13年「奇跡のリンゴ」など。今年は「ぼくたちの家族」に続いて、「蜩ノ記(ひぐらしのき)」(小泉堯史監督、10月公開)が控えている。

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