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【林家たい平】「笑点」大喜利メンバーの“オレンジ色のニクい奴”

2014.08.20


林家たい平【拡大】

 人気長寿番組「笑点」大喜利メンバーの“オレンジ色のニクい奴”。今では「恐妻家」「ブラック団団員」などといくつもの顔を持つが、最初は師匠の林家こん平が病気療養のため休演したときの代役だった。その後、こん平の復帰のメドが立たず、番組の若手大喜利で座布団が一番多い人がレギュラー獲得という企画に参戦した。

 「ガチガチに力が入りすぎて、面白いことが言えずカラ回りですよ」

 ほかのメンバーの座布団が積まれていくなかで、なぜか司会の春風亭昇太が様子の変わった行動に出た。

 「師匠の席を死守したいという思いが昇太兄さんに伝わったんですかねぇ。まわりの人の座布団をどんどん取り始めたんですよ」

 座布団は増えないままの3枚で優勝。昇太の親心でオレンジの座を見事に勝ち獲った。

 「最初の大喜利の収録で何も気づかず、『こん平で〜す』って言っちゃたんです。円楽(当時・楽太郎)師匠からは『もう師匠の名前までもらっちゃったのかよ。オレより腹黒だなぁ』ですよ」

 落語との出合いは大学に入学して間もなく。フラッと「武蔵野美術大学落語研究会」ののれんが掛かっている部室をのぞくと、先輩たちに「落研に入れるつもりはないけど、コタツに入っていかないか?」と誘われた。部室に入って話を聞いてみると、新入部員が入らないので華々しく解散するにはどうしたらいいかを相談していた。

 「それなら、ボクが入ったら潰れないで済むんですかと尋ねると、先輩に『気にしないで』と言われた感じがとってもよくて、それで入部をきめちゃったんですよ」

 高座名は「遊々亭迷々丸」。お笑い好きで文化祭には参加はしていたが、しっかりと落語と向き合っていたわけではなかった。大学3年のある晩、課題の作品を仕上げているときに、ラジオから流れてきた五代目柳家小さんの「粗忽長屋(そこつながや)」の面白さに筆が止まった。

 「想像力の中から広がって笑ってしまう。笑った後には、あったかいものが体中を流れるような気がして、今まで経験したことがない笑いの質に感動しましたね」

 教授からの最初の教えは「デザインは人を幸せにするためにある」という言葉。意味を理解できないまま、課題をこなし、表現手段を学ぶ毎日だった。落語に衝撃を受けてからは、「言葉で人の心に絵を残すこともデザイン表現のひとつ。しゃべることで人を幸せにできるんじゃないかと落語家になろうと思い始めた頃でした」。

 4年になる前の春休み。落語家に向いているかを見極めるために、ゲタを履き、フンドシを締めて、男仕立てに直した母の着物を身に着け、風呂敷包み1つ、落語を2席だけ覚えて上野から一人旅。

 「何もできないまま5日間。やっと(宮城県の)石巻の老人ホームで落語を聴いてもらえることになって、たくさんの笑顔をいただいて、(落語家になると)約束したんです。石巻の海に向かって『落語家になる〜』と誓いを立てました」

 東日本大震災後は「お役に立てば」と落語家にしてくれた石巻へ足しげく訪ねて落語会も開催。“第2の故郷”に笑顔を運んでいる。

 2年前に「近くに寄席がない方にも、気軽に映画館の大スクリーンで空気感を味わってもらいたい」という思いで「映画館落語 かもめ亭」が実現。さらに夢が実って23日公開の落語ベースの人情喜劇映画「もういちど」が誕生した。

 「子供たちに落語を知ってもらいたいですね。今の子供たちにも大人のようにつらいことや悩みがあると思うんです。発散するために落語で笑っていられれば、今のつらさも消えて明日も頑張ろうという気持ちになるんじゃないかな」

 映画はミュージックビデオの巨匠、板屋宏幸監督が落語の有名な噺(ネタ)の数々を巧みに織り込んだ脚本を書き、たい平が主演。江戸の長屋を舞台にした時代劇だ。

 「一番感じてほしいのは、人と人がもっともっと繋がっていこうよということですね。たくさんの人と出会ったその先に本当の幸せがあるような気がします。市井の人の喜び、悲しみ、苦しみ、再起ありが落語なんですね」

 暮らしに根ざした喜怒哀楽の溶け込んだ、家族が楽しめる映画になった。

 愛する落語を浸透させる天下太平の伝道師だ。 (ペン・高山和久 カメラ・大山実)

 ■はやしや・たいへい 落語家。本名・田鹿明。1964年12月6日生まれ、49歳。埼玉県秩父市出身。88年、武蔵野美術大学卒業後、林家こん平に入門。92年に二ツ目。2000年、真打ち昇進。08年「平成19年度芸術選奨文部科学大臣新人賞」を受賞。10年から武蔵野美術大学・芸術文化学科の客員教授。秩父市観光大使、石巻観光大使を務める。今年、落語協会の理事に就任した。『親子で楽しむ こども落語塾』(明治書院)を執筆、落語会で全国を駆け回るなど、多方面で精力的に活躍中。24日、東京・銀座の博品館劇場で独演会。

 映画「もういちど」は全国のイオンシネマで公開。主題歌「君に捧げるlove song」は浜田省吾が提供している。

 

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