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【安里麻里】“女タランティーノ”はホラーの名手 「劇場版 零〜ゼロ〜」のこだわり

2014.09.25


安里麻里【拡大】

 ホラー作品の評判が高く、今や“女タランティーノ”の異名をとる気鋭監督。26日公開の新作「劇場版 零〜ゼロ〜」は、130万本のヒットを記録したホラーゲームが原作だ。

 物語の舞台は、閉塞感漂う山間の町にある女学園。登場するのは思春期の真っ只中にいる美しい女の子たち。耽美的な世界観を、16ミリフィルムで見事に焼き付けた。

 「原作の浮世離れしたイメージを考えたとき、どこの国なのかいつの時代なのかわからない、不思議な雰囲気をつくりたかった。16ミリで撮ってみて、こんなにきれいなんだなと、思った以上に効果がありました」

 淡い色調、フィルムならではの粒状性。幽霊が明るい場所に出てくることができたのも、この幻想的な映像ゆえだ。

 「女子の集団で起きるホラーとして、従来と違う演出がしたくて、白昼に幻を見る奇妙さにこだわりました。それが女の子の思春期のイメージに重なり、夢なのかなんなのかわからない不思議な感じを出せたと思います」

 主演の中条あやみ(17)はじめ、生徒役は実際に10代のキャストにこだわった。

 「私(わたし)的には、20代でも30代でも学生服着せていいと思う。でも今回の耽美ホラーの雰囲気づくりを考えたとき、大人が制服着て出ちゃうと、ちょっと違うと思ったんです。本当の10代なら、まだ芝居も顔もかたまっていない、そんな危うさが魅力として映るんじゃないか、って」

 映画の話になると、生き生きとして話が止まらない。ホラー作品につながるのか否か、少女時代の素顔は「根暗だった」と笑う。

 「とにかく一人でいる子。放課後に一人で図工室にこもって絵を描いたり。中学ではテニス部に入りもしたんですが、基本的には一人で何かをつくる子でした。子供時代に観た映画で印象に残っているのは、クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』。完全にトラウマになって。子供って怖いもの好きじゃないですか」

 大学に行くため沖縄から上京した当時は、映画を仕事にするとは思っていなかった。

 「映画が好きだったので、サークルに入りました。素人ですが映像を撮り、編集し、音をつくって…。自分ならこうしたいと作る側としての欲求がわいたことが一番の入り口でした」

 その後、創立まもない映画美学校に入り、プロの監督たちと出会う。よかったら現場に来てみろ、と誘われた。初めて体験するプロの現場。

 「とても過酷だなと。眠れない。時間に追われる分、キビキビ動かないといけない。怒鳴られる。こうやって映画って撮られているんだと思うとすごく夢中になれて。一つのものを作るため、みんなの意識が集中し、大人げなく一生懸命やる。こんな世界があるんだと」

 普通ではない世界に、魅せられるうちに「何か撮ってみないか」とまで言われるようになった。

 「最初は撮影部だったんですけど、理不尽なことで怒られると若い人は簡単にやめちゃう。でも私は、スタッフ全員が現場から離れても、監督の横にいて撮り上げていた。それを上の人たちが見て、こいつに撮らせてやりたいと思っていただけたんじゃないかと」

 平成版“世界のクロサワ”として海外でも人気がある黒沢清監督のもとで学んだ。授業で撮った5分間のフィルムが、銃を撃ちまくる壮絶なアクションで周囲を驚かせた。以降、アクション・ホラーが主戦場。だが、監督業は、スタッフと勝手が違った。

 「自分の頭の中にしかないことを、役者、スタッフ、すべての人に伝えなければいけない。監督としてやっていける手応えを感じたのはごく最近で、今年1月公開の『バイロケーション』。それまで自分の半径3メートルぐらいしか見えていなかった私が、落ち着いて人を見るようになれた。必要なものと、いらないものを取捨選択できるようになった。経験が一番大きいかもしれないです」

 日本では、まだまだ女性の映画監督は少数派だ。現場の過酷さは想像に余りあるが、監督業に耐えてこられたのは、「負けず嫌いだったからじゃないですかね」。

 次回作として娯楽作に思いをめぐらせている。楽しみだ。(ペンとカメラ・志和浩司)

 ■あさと・まり 映画監督、脚本家。1976年3月14日生まれ、38歳。沖縄県出身。横浜国立大学在学中、映画美学校に第一期生として入学。フィクション・コース高等科を修了。同期に清水崇氏、古沢健氏ら。「CURE キュア」の黒沢清監督、「リング」の脚本家・高橋洋氏らの指導を受けた。2004年「独立少女紅蓮隊」で劇場長編映画の監督としてデビュー。おもな監督作品に「呪怨 黒い少女」(09年)、「リアル鬼ごっこ3〜5」(12年)、「バイロケーション」(14年)など。

 

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