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【楳図かずお】77歳でホラー映画監督デビュー「自伝的な話にしました」

2014.09.26


楳図かずお【拡大】

 漫画界の巨匠が77歳にして映画監督デビュー。27日公開の「マザー」は、自伝的な要素を含んだホラー映画だ。

 「世界中で自分にしか書けないものと言えば自分のことなので、自伝的な話にしました。さらに母は僕にとって大きな存在なので、母をテーマにしました」

 漫画家・楳図かずお(片岡愛之助)と編集者(舞羽美海)を取り巻く、亡くなった母・イチエ(真行寺君枝)の怨念を描いた作品。もともと監督業には興味はあったのだろうか?

 「潜在的に映画監督という職業は面白そうだから、いつかやりたいと思っていました。漫画を描いていた時は、漫画の一番のライバルは映画だと思って、映画に負けないように映像化できないものを考えて描いていたんです。でも最近はCGで表現できるようになり、今回のような作品も作れるようになりました」

 映画と漫画制作には、共通点があるという。

 「漫画を描くときは、頭の中で映像を想像しながら描いているので同じなんです。映画の絵コンテを丁寧に描いたのが漫画ですね」

 単なるホラーではなく、美しさにもこだわった。

 「美しさがあって怖さがあると、見終わった後に後味が悪くないんですよ。この映画でぜひ、“美しい恐怖”を体験してください」

 唯一無二。楳図ワールド炸裂の映画だ。

 小学4年生のときから漫画を描き始め、手塚治虫の漫画「新宝島」を読んだときに、プロの漫画家になろうと思った。

 「手塚治虫さんの漫画は子供に焦点を当ててないんです。当時は子供ながらに、子供のレベルに合わせている漫画はバカにしていると思っていました。面白いものを描いたら、子供は分からないながらも探ろうとするものなんですよね」

 プロの漫画家になるために見出したジャンルが「恐怖漫画」だった。

 「漫画家として他にないものを描こうと考えたときに、手塚さんの反対を行こうと思い、怖いものにしようと。子供は怖いものが好き。誰にでも怖いものを追求したいという本能が備わっていますしね」

 表面的な怖さだけではないのが楳図漫画の魅力だ。

 「人の本質を描くようにしています。人の根本的な部分を探るところから作品を作っているし、それは誰しもが共通して持っているものなので、共感しやすいですしね」

 恐怖漫画だけではなく、ギャグ漫画「まことちゃん」などでも有名。幼稚園児の沢田まことが繰り広げる下ネタ満載の作品だ。

 「『まことちゃん』も人の根源的なところを描いています。子供にとってうんちは汚くない。大人になるにつれて遠い存在になるのは、ある意味、本質から遠ざかっているとも言えますよね」

 ギャグと恐怖は遠いものだと思いがちだが、実は表裏一体だ。

 「笑う方はギャグでも、笑われる方には恐怖を与えることもありますよね。さらに追いかける方はギャグでも、追いかけられる方は恐怖だったり、近くから見ると恐怖だけど、遠くから見るとギャグに見えたりしますしね」

 この日の取材は、東京・吉祥寺の自宅「まことちゃんハウス」にお邪魔した。トレードマークである赤と白のボーダーラインが基調の洋館。玄関を入ると、まことちゃんグッズがズラリと並び、漫画の世界がそのまんま目の前にある。なぜ、こうも赤と白のしましまにこだわるのか?

 「赤はエネルギーの象徴なんです。血や太陽も赤ですしね。でも赤だけだと赤と言えるかどうか。だから対比させる白が必要。以前、フランス人に『白は色ではありません』と言われたことがあって、それから僕にとって白は、『ありません』の意味なんです」

 強いポリシーの持ち主だ。

 「漫画家は面白いことをしていなくてはいけない。子供の頃、漫画家は面白いことをやる人だと思って、そうなろうとずっとやってきました」

 “楳図かずお”という生き方、存在自体が、作品なのだ。 (ペン・加藤弓子 カメラ・矢島康弘)

 ■うめず・かずお 漫画家。1936年9月3日、和歌山県生まれ、奈良県育ち、78歳。18歳で「森の兄妹」でプロデビュー。66年には講談社「少女フレンド」に連載した「ねこ目の少女」「へび少女」で恐怖漫画の第一人者として知られるようになる。75年「漂流教室」ほか一連の作品で小学館漫画賞を受賞。76年から発表した「まことちゃん」でシュールなギャグや“グワシ”ポーズが社会現象となった。その後も「おろち」「わたしは真悟」「14歳」など、時代を先取りした独創的な作品を次々に発表、その多くが映像化されている。77歳(撮影当時)で初めて監督作「マザー」に挑んだ。

 

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