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【行定勲】当代随一の監督は終着点決めない「オールラウンダー」

2014.12.25


行定勲【拡大】

 数々のヒット映画を世に送り出している当代随一の監督。27日公開の「真夜中の五分前」は中国・上海を舞台に、三浦春馬、リウ・シーシー、チャン・シャオチュアンといった、日本、中国、台湾の人気俳優が共演する恋愛ミステリーだ。

 「現代の日本では作りえない作品をやりたかったんです。今は分かりやすい映画が求められがちですが、空気やリズムなど、目に見えないものを表現したかった。そこでいろいろとあたったところ、上海のプロデューサーが一緒にやろうと言ってくださったんです」

 原作はベストセラーとなった本多孝好氏の恋愛小説。恋人に先立たれ、上海で時計修理工をしているリョウ(三浦)は、ルオラン(リウ)に出会い、惹かれていく。彼女には一卵性双生児のそっくりな妹・ルーメイがいた。ある日、姉妹は旅先で事故に遭遇。妹だけが助かり帰国したのだが、彼女は本当に妹の方なのか? それとも…。

 「自分のアイデンティティーをつくるのは他者。双子の姉妹のうち1人が亡くなった時に、もう1人の自我が不確かになっていく。姉なのか妹なのか分からない人間がそこにいるとき、主人公はどう対峙していくのか。その結末をハッピーエンドとアンハッピーエンドのどっちに感じるのかは、観客によって変わるでしょうね」

 中国の人気女優・リウ・シーシーが1人2役で双子の姉妹を熱演。

 「双子の姉妹をそれぞれ魅力的に見せていて、さらに1人が行方不明になったときには別の人格を作り出していました。すごく聡明な方です」

 10月の釜山国際映画祭に招待され、日本公開に先駆け、中国全土の4000スクリーンで公開された。中国での評価は上々だ。

 「映画を作りたい」と思ったのは小学生のときだ。

 「熊本城で黒澤明監督の『影武者』の撮影をやっていて、多くのスタッフが働いているのを見たんです。その後、完成した作品を見たら、エンドロールにスタッフの名前がずらっと出ていて、自分もこういう人になりたいと思ったし、たくさんいたのでこの中の1人にはなれるんじゃないかと。だから助監督をやっていたときも、監督でなくてもいいと思いながら映画に関わっていました」

 2000年に初の長編監督作「ひまわり」で、第5回釜山国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。翌年公開の「GO」では、日本アカデミー賞監督賞をはじめ国内外で50もの賞に輝いた。さらに「世界の中心で、愛をさけぶ」(04年)では、観客動員620万人、興行収入85億円を記録。多くの人に支持される映画を生み出す秘訣は何だろう?

 「現場では俳優やスタッフの意思が大事。『君たちはなにをやりたいの?』と聞くことで、相手は色々なことを考えるし、責任も出てくる。命令されてやると手を抜くし、それ以上のことは考えなくなるんですよ」

 作品は着地点を決めないまま作る主義だ。

 「普通の映画監督は、着地点を決めることが多いし、絵コンテを書いてみんなに配る人もいます。それはそれですごいことだけど、僕は着地点を持ってもどうせズレるものだと思っているし、そのズレが面白いんです」

 活動は映画監督の仕事だけに留まらず、テレビドラマや舞台の演出のほか、自身のラジオ番組も持ち多才にして多彩。

 次にやってみたいことは?

 「原風景を元に小説を書きたいですね。今も囚われている風景によって、今の自分が確立されているので、それを書き進めていけば、自分を解明できるかもしれません」

 今回の新作といい、監督の作品には、“大切な人の死”を取り入れているものが多い。

 「友達や知り合いを亡くしていて、そのたびに『自分はなんで生き残っているんだろう』と考えさせられます。死は残された人にとっての試練でもあるので、生と死を描くときは、死んだ人のことよりも生き残った人がどう生きていくかを描きます。その方がその死に対して表現できるんです」

 今後も生きる意味を問いながら、人々の心に残る作品を作っていく。 (ペン・加藤弓子 カメラ・大西正純)

 ■ゆきさだ・いさお 映画監督。1968年8月3日生まれ、熊本県出身。46歳。助監督として林海象監督や岩井俊二監督の作品に参加。2000年に「ひまわり」で長編映画デビュー。05年に吉永小百合主演の「北の零年」、三島由紀夫の小説の映画化「春の雪」が公開。10年には吉田修一原作の「パレード」でベルリン国際映画祭パノラマ部門国際批評家連盟賞を受賞するなど海外での高い評価を得る。映画にとどまらず、携帯動画配信BeeTV「女たちは二度遊ぶ」の制作や、初の連続テレビドラマ「平成猿蟹合戦図」(WOWOW)のほか、舞台演出も手掛ける。月に1回、郷里のFMK(エフエム・クマモト)で「月刊行定勲」を生放送している。

 

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