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不動産業界に現れた2つの「マイナス」 経験値のない五里霧中の世界へ…

 最近、不動産取引でマイナスの提案をする業者を見かけるようになった。

 「あなたがご所有の不動産をマイナス××万円で買わせていただきます」

 どういうことかお分かりだろうか。簡単に言えば「××万円払ってくれれば、所有権をこちらに移転して差し上げますよ」ということ。

 言ってみれば、「ご所有の不動産を粗大ゴミとして引き取って差し上げるから費用を払ってください」みたいなものだ。

 このゴールデンウイーク(GW)で故郷の実家に帰る人も多いことと思う。そういう方の多くは、まだご両親、あるいはどちらかがご健在のことだろう。

 しかし、いずれは相続が発生する。田舎の実家不動産をどうするかは、都会で暮らすオレンジ世代(40代以上)には悩ましき問題だろう。これからは、こういった「マイナス処分」も本格化するのではなかろうか。

 他にも「マイナス」は考えられる。可能性はかなり低いが、住宅ローンのマイナス金利だ。

 住宅ローンを借りると、元本の他に金利分の支払いが生じる。そこがマイナスになるのだ。つまり、マイナスの分だけ元本の返済が差し引かれる状態。そんなことはあり得ない、と考える人も多いことだろう。しかし、理論的にはあり得る。

 現在、日本の長期金利は0%状態。住宅ローンの金利も変動なら0・4%台の場合さえある。しかし、これがマイナス0・1%になることも「あり得る」と私は考える。

 どういうことか。仮に、この10月から予定通り消費税が10%に引き上げられたとしよう。過去、消費税は2回引き上げられ、3%から5%、そして8%へ。2回ともハッキリと景気が後退した。

 その経験値があるので現政権は手厚い景気対策を用意している。しかし、中身を見ると一般人には分かりにくいものが多い。だから、おそらく今回も景気後退は起こり得る。

 景気が悪くなると内閣の支持率も下がる。現状、景気後退に対しては金融緩和が最も効果的だとされる。しかし、今の日本は2013年に始めた異次元金融緩和を継続している状態。金融緩和の柱であるマネーの供給も金利水準も、考え得る限りの段階まで緩めている。実質的にこれ以上は緩和できない状況にあると思われる。

 しかし、その状態を覆せるカードがある。それがマイナス金利の深掘りだ。現在は金融機関同士の間だけで発生しているマイナス金利を一般人にも適用する。それが住宅ローンのマイナス金利。住宅ローンを借りると金利をもらえるのだ。

 現状で考えられる効果的な金融緩和は、もはやこういう手段しか残されていない。まさに異次元だが、まったく可能性がないとも言い切れない。

 不動産業界はまさに経験値のない五里霧中の世界に入っていく可能性がある。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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