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【ABS世代が「シニア」を変える】シニアマーケティング失敗を招く「60歳以上十把一絡げ論」

 私(鈴木)は連載1回目で、シニアマーケティング苦戦の大きな要因は、60歳以上を一括りに考えていることだとお伝えしました。これは売り手側が40代のリーダーを中心とした若い世代であり、シニアをひとまとめに捉えているからです。私はこの考えを「60歳以上十把一絡げ論」とセミナーなどで紹介しています。

 実は30歳当時の私も同じ考えでしたが、現在は平均寿命が大幅に伸びて超高齢化社会(健康長寿社会)を迎えています。各世代のニーズに応えるには、生まれ育った時代背景を理解し、細分化して捉えることが重要です。

 まずは(1)戦前・戦中世代。現在75歳以上の後期高齢者世代です。戦争体験を経て社会人になり、1960年代の高度経済成長に尽力した私の親世代です。戦後の物(モノ)がない時代を体験していることから、消費に慎重で「必要なモノを買い、大切にする」世代。娯楽も少なかったため、「遊び方を知らない」世代でもあります。

 次に(2)団塊・ポスト団塊世代。今年65歳から74歳の前期高齢者世代です。この世代が社会人になった70年代は日本市場も成熟期。モノが普及して、彼らの家族は「ニューファミリー」と言われました。そして、「もっと良いモノが欲しい」という欲求から、マーケティングは差別化が始まります。ただ、この時代は学生運動が盛んで、団塊世代の男性も遊びを知りません。一方、女性は「アンノン族」に代表される新たな遊び方とライフスタイルを形成します。現在のシニア市場はこの世代の影響力が強いため、「高齢者は女性のほうがアクティブ」とみられています。

 それに続く(3)ABS世代は、昭和30(1955)年から43(68)年生まれ。今年、51歳から64歳のプレシニアです。物心ついた頃からテレビやクルマがあり、大学進学率も大幅に向上し、雑誌「JJ」や「POPEYE」、映画「サタデー・ナイト・フィーバー」の3大インパクトで多くの若者が遊び、やがてバブルを体験した世代です。ABS世代は「モノを買ってコト(事=体験)をどう消費するか?」という“価値体験”に対価を払う消費傾向があります。

 これまでシニアマーケティングは「健康・旅行・孫消費…」といったキーワードで市場形成されてきました。しかし今後は人や社会と関わり、自分の価値を人に提供することで承認欲求を満たす「シニア市場の需要創造」が大きなテーマだと考えます。

 昨年、博報堂生活総合研究所が「トキ(時)消費」という言葉を提唱しました。これは若い世代だけのものではありません。ABS世代の「コト(事)消費」傾向をさらに進化させ、「今この瞬間に価値がある! 人と価値を共有して、さらには人に影響を与えたい!」というニーズを満たすモノやサービスの提供が、人生100年時代のシニアマーケティング、そしてシニアライフ活性化のカギを握るでしょう。

 ■鈴木準 1960年生まれ。一般社団法人日本元気シニア総研主任研究員。ジェイ・ビーム代表取締役。マーケティングコンサルタント。広告代理店を経て37歳で起業。企業のモノやサービスのコンセプト開発、プロモーション戦略に関わっている。

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