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【新・モノ言う株主】波乱起こす!? 再び動き出した“物言う株主”村上世彰氏 廣済堂へのTOBは吉か凶か

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 ここにきて物言う株主(アクティビスト)が再び猛威を振るっている。経営統合やMBO(経営陣による買収)といった企業の重大決定が大きく左右されるケースも少なくない。そんな攻防の最前線を見ていく。

 「村上さんは経営する気なんてないと思う。経営陣もそれを見透かしているんじゃないか」

 印刷業を手掛ける廣済堂の関係者はそう見立てを話す。同社が打ち出したMBO計画を巡り、異議を申し立てたのは元村上ファンド代表の村上世彰氏。対抗TOB(株式公開買い付け)まで仕掛けており、睨(にら)み合いは激しさを増す一方だ。

 廣済堂が経営低迷の打開策としてMBOによる非上場化計画を公表したのは1月中旬。米国系投資ファンドのベイン・キャピタルと組んだ。が、直後から投資会社レノなど村上氏の関係先が市場で株を買い占め始め、もくろみは狂うこととなる。

 村上氏の参戦が思惑を呼び、株価はMBOの買い付け価格610円を上回って推移。そこでベインは3月初旬、価格を700円に引き上げた。この間、村上氏側からは何度も書簡が送られ、対抗TOBが仄(ほの)めかされていた。要はMBO価格が低すぎるとの催促だ。

 インサイダー事件後、2012年に株式市場へと舞い戻った村上氏だったが、15年11月に証券取引等監視委員会の強制調査を受け身動きがとれなくなった。嫌疑が晴れたのは昨春。再び投資を活発化させ、東栄リーファーラインのMBO計画に介入し価格引き上げに成功。300億円超を投じた新明和工業でも今年1月、会社を自社株買いに追い込み利益を上げた。

 そして、今回の廣済堂である。3月20日、村上氏側は最終手段を繰り出す。1株750円での対抗TOB実施を表明したのだ。すでに20億円を投じ、市場で買い集めた約14%と合わせ過半数を超える株を取得するとした。

 村上氏が廣済堂にこだわる理由はおそらく子会社の東京博善にある。100年超の歴史を誇る同社は東京23区に6カ所の火葬場を持つ寡占企業。毎期30億円前後の経常利益を上げ、利益剰余金は370億円超にも達する。その企業価値を顕在化できれば廣済堂は安い買い物というわけだ。

 もっとも東京博善はある種の伏魔殿。廣済堂創業者の桜井文雄氏(04年死去)は経済界の裏表を知るフィクサーで、東京博善株の6割を買い集め子会社化できたのはその剛腕あればこそ。が、同氏ですら僧侶の反対などで03年頃までに東京博善の上場を断念している。

 結局、4月上旬、ベインは村上氏とのチキンレースから降りた。5月10日を期限とする対抗TOBは成立の可能性が高まっている。経営権を握る事態は村上氏にとって想定内なのか、それとも想定外なのか…。

 ■高橋篤史(たかはし・あつし) 1968年生まれ。早稲田大学教育学部卒、東洋経済新報社などを経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に『凋落 木村剛と大島健伸』『兜町コンフィデンシャル』『創価学会秘史』など。

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