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「シャッター商店街」大量相続時代がくる!? 提案したい「再開発準備保有制度」

 私は新築マンションの資産価値レポートを書くために、東京23区と川崎市の大半の地域を3カ月ごとにひと回りしている。山手線の内側と外側では、街の風景に顕著な違いがある。それはシャッターを閉じた旧個人商店の有無である。

 山手線の外に出ると、途端にシャッター商店が目に入る。例えば、私の事務所はアドレスに「日本橋」が冠されているが、周辺にはシャッター商店が多い。

 しかし、山手線の内側に入ると、途端にシャッター商店は激減する。やはり、不動産の資産価値が影響しているのだろう。資産価値が高ければ、売るなり貸すなり、活用法が見つかるのだ。

 今の日本に小規模個人商店が生き残れる余地はない。曲がりなりにも継続できるのは医療、美容、飲食といった限られたカテゴリーのみだ。昔のように何かモノを売るという商行為では店舗の維持すら難しい。

 シャッターを閉じた小規模個人商店はどうなるのだろう。見ている限り、人が住んでいる様子がうかがえる場合もあるが、10年以上も空き家で放置されていることが明らかなシャッター商店もある。

 そういう不動産にも所有者はいる。そのお店を経営していた人か、それを受け継いだ相続人。

 私は今年で57歳になる。私の記憶では、同年代以下で親の個人商店を引き継いだ人はかなりの少数派だ。我らの学生時代でも、個人商店の未来は明るくないことがどことなく想像できたものだ。だから、多くの同級生や年の近い先輩後輩はあえてサラリーマンの道を選択していた。

 したがって、小規模な個人商店の経営者はほとんどが60歳以上だろう。70歳を超えた団塊の世代も多いと推測できる。

 店を閉じて他の仕事に就いたであろう元個人商店主は今後、徐々に鬼籍に入っていくはずだ。そうすると、相続が発生する。

 受け継いだ昔のお店が売れるのならまだいい。売れない場合はどうなるのか。今の法制度では、相続した人が永遠に固定資産税を払い続けなければならない。あるいは建物に倒壊の危険などが生ずれば、それを除去する責任も生じる。まことに厄介だ。

 私としては「再開発準備保有制度」という仕組みを提案したい。土地がまとまることで再開発が可能なエリアであれば、その地域に再開発準備保有組合というものを作り、そういう旧個人商店の不動産所有権を一時的に保有する。元の所有権者から無償で譲り受けるのだ。そして保有組合の固定資産税等の支払い義務を再開発終了まで猶予する。

 組合はその地域での旧店舗やその他の不動産の取得を進め、ある程度の規模になるとデベロッパーとコラボで再開発を進める。最終的にはまとまった土地をデベロッパーに売却することで得た譲渡益から、猶予されていた固定資産税を払い、なお残余があれば元の所有権者に配当する。

 こういう制度でも作らない限り、郊外や地方のシャッター商店に明るい未来は描けない。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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