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編集作業中に本人に怒られる夢を… 宝島社「樹木希林 120の遺言」

 『楽しむのではなくて、面白がることよ』

 昨年9月に亡くなった女優、樹木希林さん。彼女の名言集や関連本が売れている。牽引する1冊が、今年1月に宝島社(東京都千代田区)が刊行した「樹木希林 120の遺言」。発売3カ月で54万部と好調だ。

 企画の背景には、2016年に希林さんが出演した同社の企業広告「死ぬときぐらい 好きにさせてよ」がある。広告は英国の画家ジョン・エヴァレット・ミレイの名作「オフィーリア」をモチーフに、死を連想させるように森の小川の中で本人が横たわっている。全国紙に掲載、終活宣言と大きな話題になった。

 その縁から、18年10月29日、同社は希林さんの写真と言葉をちりばめた追悼広告「あとは、じぶんで考えてよ。」を朝日新聞に、「サヨナラ、地球さん。」を読売新聞に出稿した。

 この広告の反響も大きく、言葉を集めた本が欲しいという要望が殺到した。

 編集にあたり、テレビや新聞のインタビュー、雑誌、専門誌、入手困難なフリーペーパーに至るまで「メディアに露出した中から集められるだけの言葉を集めた」(第1書籍局第3編集部、宮田美緒氏)。

 宮田氏は生前の希林さんとは面識がない。だが、集めた言葉を読み、関係者の話を聞くうちに「希林さんと話しているような不思議な経験をした」。

 集める苦労だけではない。選ぶのも苦労した。「どの言葉も心に刺さるので選びきれず、当初100の予定が120になった」という。

 面白いのは“身も蓋もないこと”をいう言葉が多いこと。発言に嘘がなく、冷徹で遠慮がない。それでいて、嫌みがない。そのあたりが「特に女性の心に響いている」(同)。

 例えば、『結婚は分別がつかないうちにした方がいいよ』。そして『一人でいても二人でいても、十人でいたって寂しいものは寂しい。そういうもんだと思っている』。

 言葉を大切にするため、権利者の許可を得て本人を著者とした。さらに「掲載したメディアから“お借りした言葉”でもあるので、出典を含めて慎重に、丁寧に扱った」。

 表紙には16年の広告写真を使い、長く手元に置いて読んでもらえるようデザインにも時間をかけた。類書との差別化は徹底的に考え、生、老、絆など8つの章で構成した。言葉単体を右ページ、左ページを読み物としてレイアウト。プライベート写真も掲載した。

 編集作業を始めて1カ月半、本人に怒られる夢を見た。「なんで怒っているかわかるよね、とおっしゃるんだけど…」(同)。悩みながら作業を続けた。集大成となるように心掛け、丁寧に作業したという。

 120番目の言葉は、現在の心境について語った『いまなら自信を持ってこう言えます。今日までの人生、上出来でございました。これにて、おいとまいたします』。

 編集者が苦労して編んだ120の言葉から、1本の映画のような女優の人生が浮かぶ。(村上信夫)

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