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【ジョン・ウェイン 西部劇の神髄】“最も偉大な西部劇映画”も主役の性格から当時は不評 「捜索者」

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 ジョン・フォード監督は『捜索者』(1956年)を「家族の一員になることができなかった一匹狼の悲劇」と説明している。

 物語は南北戦争の3年後から始まる。従軍から兄の住む家にイーサン(ジョン・ウェイン)が帰ってくる。クレイトン牧師の依頼でコマンチ族から牛を取り返そうと、イーサンらが赴く間、家がコマンチ族に襲われ兄夫婦らは虐殺されてしまう。罠だったのだ。姪のルーシーとデビーの幼い姉妹はさらわれて行方不明に。捜索隊が結成されるが、途中でルーシーの遺体を発見する。

 イーサンとマーティン(ジェフリー・ハンター)が果てのない捜索の旅に出て6年。ついにコマンチの酋長に会うことができた。そのテントでコマンチ族の娘として生きるデビーを見つけるが…。デビーの子供時代はラナ・ウッド、大人になったデビーを演じるのは姉のナタリー・ウッド。コマンチ酋長のテントでデビーと衝撃的な再会を果たしたイーサン。

 何の説明もないが、殺された兄たちを見つけた時、イーサンが最初に口にしたのは兄嫁のマーサの名だ。このことから、マーサはかつて彼の恋人だったことが分かる仕掛けだ。なぜ、イーサンは執拗にデビーを捜し続けたのか。それはマーサの娘だったからだ。

 アメリカ映画協会の「最も偉大な西部劇映画第1位」にも選ばれたほどの傑作だが、公開当時は不評で、アカデミー賞の候補にさえ選ばれなかった。その理由はネイティブ・アメリカンへの人種偏見を隠そうともしない主役の独善的な性格が災いしたようだ。

 スティーブン・スピルバーグは仕事に行き詰まると必ずこの映画を見直し、デヴィッド・リーンは『アラビアのロレンス』に使う撮影技術をこの作品から盗もうと必死に見返した。脚本家のポール・シュライダーはイーサンの強烈な個性に影響を受けて『タクシー・ドライバー』でロバート・デ・ニーロが演じたトラヴィス・ビックルを作り上げた。ウェイン自身も末の息子にイーサンの名をつけたほどだ。

 アメリカの著名なジャーナリスト、グレン・フランクルの著書『捜索者』によると、この作品を再評価したのはジャン・リュック・ゴダールらフランス・ヌーベルバーグの監督たちが最初だという。(望月苑巳)

 ■ジョン・ウェイン 1907年5月26日、米アイオワ州生まれ。映画スタジオで大道具係として働く中、ラオール・ウェルシュ監督に抜擢され『ビッグ・トレイル』(30年)に主演。64年には肺がんを発症したが、片肺を失っただけで奇跡の復活。79年6月11日、ロスの病院で死去。

 ■捜索者 56年公開。監督はジョン・フォード。79年、『日曜洋画劇場』(テレビ朝日系)がウェインの追悼番組で『駅馬車』でなく、この作品を選んだことでも知られる。

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