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スペイン実力派監督が描く人間の冷酷さと温かさ 映画『ペトラは静かに対峙する』29日公開

 長編6作目となるスペインの実力派ハイメ・ロサレス監督の初の日本公開作が29日公開の『ペトラは静かに対峙する』だ。その柔らかな光はスペインの未来を照らしている。

 スペイン・カタルーニャに住む彫刻家のジャウメ(ジョアン・ボディ)を訪ねた女流画家のペトラ(バルバラ・レニー)はまだ見たこともない父を捜していた。だが、ジャウメは「父ではない」と冷たく拒絶する。

 ジャウメの家で長年勤めていたメイドが自殺をする。その原因がジャウメにあると知ったメイドの息子はカタルーニャの地を捨てる。ペトラの母はこの世を去るが、最期までペトラに父の名前を告げなかった。ペトラとジャウメの息子は恋仲になるが、ふたりの前にジャウメの存在が立ちはだかる。

 ペトラがあっさりと絵筆を捨て、母になり保育士に転職する姿に残念な思いを抱くが、この生き方が多くの人の現実であり、その姿をいとも簡単に描いてしまうのが、ハイメ・ロサレスの手腕なのだ。

 カンヌ国際映画祭の常連のロサレスは、巨匠アッバス・キアロスタミのワークショップで映画作りを学んだ。生前、キアロスタミはロサレスについて「彼はとても良い生徒だ。でも師弟ではないよ。一緒に映画を作る仲間だよ、彼は」と語ったが、車内での人間の表情ひとつが、次の展開に連なるところなどはやはり師匠譲りだ。

 かつて「ペネロペ・クルスで映画を撮ろうとは思わない」と話していたロサレスだが、アルモドヴァル映画でおなじみのベテラン女優マリア・パレデスと地元の素人を彫刻家役に抜擢、夫婦役にキャスティングした大胆さには驚かされた。

 美しい自然のカタルーニャに溶け込んだ彫刻家の貫禄は、そこで長年暮らす人の存在感に他ならない。過去と未来が交錯する展開だが、軸はまったくずれていない。

 人間の冷酷さ、罪深さを描きながらも、その奥に温かさを感じさせるラスト。ハイメ・ロサレスは間違いなくスペインを代表する監督である。(小張アキコ)

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