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パペットアニメの第一人者・岡本忠成の出世作「ふしぎなくすり」

 ★ミッション(39)星新一原作の思い出のアニメを探せ

 もうすぐ夏休み。今回は夏休みの思い出につながる調査依頼をとりあげよう。

 「小学校時代、夏休みには校庭や体育館で映画の上映会があって、毎年楽しみにしていました。3年生の時にそこでみたアニメに、間抜けな泥棒が博士の研究所から善人になる薬を盗んでしまった、というお話がありました。あとで、星新一という作家の原作だと知って、すっかり星新一ファンになりました。アニメもとても印象的で、いまでもはっきり思い出すことができます。ところが、タイトルを思い出せません。何というタイトルだったのか、ぜひ調査してください」 (夏オヤジ)

 依頼人が覚えているというのは、星新一のショートショート『盗んだ書類』をもとに、日本のパペットアニメの第一人者と呼ばれた岡本忠成(1932~90)が監督した「ふしぎなくすり」だろう。

 製作は、岡本が設立したアニメスタジオのエコー社。前回の東京オリンピックの翌年、1965年の作品だ。

 パペットアニメとは、人形を少しずつ動かしながらコマ撮りで撮影するアニメーションのこと。日本ではあまりなじみがないが、テレビで人気の「ひつじのショーン」などがパペットアニメだ。

 岡本忠成は大阪府豊中市に生まれ、大阪大学法学部を出て一度はサラリーマンになったが、日大芸術学部に入り直して映像の世界に進んだという経歴の持ち主。戦前から活躍するパペットアニメ作家の持永只仁に師事し、この「ふしぎなくすり」はアニメ作家として独立しての第1作。毎日映画コンクール大藤賞など数々の賞に輝いた。

 星新一作品ではほかに、「夜の事件」を原作にした「ようこそ宇宙人」、「キツツキ計画」、「花とひみつ」を原作にした「花ともぐら」を監督。いずれも人形デザインを「ひょっこりひょうたん島」のひとみ座が手がけている。「ようこそ宇宙人」ではベネチア国際児童映画祭の銀賞などを受賞した。

 岡本のアニメは民話や子供の世界をテーマにした作品も多く、変わったところでは、桂朝丸(現・ざこば)が語り手をつとめたブラック・ジョーク短編「人間いじめ」シリーズもある。

 作品はジェネオン・ユニバーサルから「岡本忠成作品集」全4巻としてDVD化されている。この機会に、テレビアニメや劇場長編アニメとは違った、短編パペットアニメの魅力に触れてはどうだろう。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。

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