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【本多俊之】ライブで目覚めた進化への音色 「マルサの女」伊丹監督とのエピソード

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【本多俊之】ライブで目覚めた進化への音色 「マルサの女」伊丹監督とのエピソード

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本多俊之  映画「マルサの女」をはじめ、テレビドラマ、アニメ、演劇で数々の劇中音楽を手がけてきた。エンドロールで最もその名を目にすることが多い作曲家。そしてもうひとつの本業が日本屈指のサックス奏者だ。

 今年はベルギーの楽器製作者でサックスの生みの親、アドルフ・サックス生誕200年。来月、初のサクソフォン・アンサンブルによるアルバム『GREETINGS〜アドルフ・サックスに捧ぐ〜』(キング)をリリースする。

 「アドルフ・サックスがいたから私もサックスを吹いていられるわけですからね。自分の年齢も考えて、ここらで出しても罰はあたらないだろう、と思い作りました」

 演奏は自身を含む13人のサックス奏者とピアニストのみ。ストリングスやドラムはいない。ともに人生を歩んできたパートナー、サックスの持つ魅力と可能性を最大限に引き出すための挑戦だった。

 「ジャズだけをやっていたのでは、この発想は出なかったでしょうが、『家族ゲーム』(フジテレビ系ドラマ)でサックスだけの音楽をできたことが、すごく背中を押してくれました。あの経験があったから、踏ん切りがついたのかもしれませんね」

 父はジャズ評論で高名だった本多俊夫さん。母はハワイアンバンドでベースとギターを奏でた音楽一家。サックスは中学3年生で魅了され、ジャズの世界に傾倒していった。

 「高校からジャズクラブに出るようになって、それまでファンだった人から『今度、ウチで吹いてよ』なんて言われると、やっぱりうれしいわけですよ。でも父からはすっごく反対されました。自由業の辛さが身にしみて分かっていたんでしょうね。そこで、父とも仲のよいミュージシャンを味方につけて説得しました」

 その甲斐あって大学在学中の78年、フュージョングループ「シー・ウィンド」を従えてリーダーアルバム『バーニング・ウェイブ』を発表。本格的に奏者としての道を歩み始めた。

 80年にTBS系ドラマ「歴史の涙」で初めて劇中音楽を担当。これをきっかけに87年の「マルサの女」をはじめ伊丹十三監督の映画シリーズに携わる。とくに「マルサ」では5拍子の独特のリズムに合わせて流れるサックスの音色が耳から離れず、強烈な印象を残す。あの曲の誕生には隠れたエピソードがある。

 「メーンの曲としてジャズバラードのAタイプを作ってOKをもらっていたんです。すると伊丹監督から『軽くBタイプも作ってみない?』と注文されてできたのがあの曲。5拍子に4拍子のサックスをのせた変な曲なんですけど、伊丹監督は『これはすごい! 裏社会っぽいね!』と気に入ってくれて、それがメーンの曲になっちゃった」

 うれしい半面、複雑な心境だった。Aタイプにも愛着があったからだ。

 「さらにエンドロールにさしかかる最後の場面でも5拍子(Bタイプ)を使うと聞いて、監督に抗議に行きました。そしたら、あの伊丹十三さんが、リズムをとりながら喜んで聴いてくれているんです。もう何も言えませんよ。これだけ愛されたのなら本望じゃないですか」

 映画は旋風を巻き起こし、自身も第11回日本アカデミー賞で最優秀音楽賞を獲得した。

 同じ時期、音楽業界は打ち込みやサンプリングなどのデジタル技術が進み、「生楽器が“イモ”という風潮だった」と振り返る。

 「私もそっちの機材の方が楽しくなっちゃって、サックスを吹く機会が減った時期でもありました。30代の頃なら年に数回のセッションでもすぐに呼吸を合わせられたんですが、40、50代になるとうまく合わせるのが難しくなってきた。お恥ずかしい話です。だから、数年前から積極的にライブをするようにしています」

 そうすると“サックス愛”がまた首をもたげてきた。「12月には映像あり、ダンスありの記念ライブにも挑戦します」と意気込む。

 「サックスは今も進化しています。難しそうに見えますが、近代の楽器なので、ものすごく合理的にできているんです。本当に楽しい楽器ですよ」

 パートナーとは今も相思相愛だ。 (ペン・磯西賢 カメラ・三尾郁恵)

 ■ほんだ・としゆき サックス奏者、作・編曲家、プロデューサー。1957年4月9日生まれ、57歳。東京都出身。78年に『バーニング・ウェイブ』を発表。以来、国内外の著名ミュージシャンと共演を重ね、特にソプラノ・サックスの音色の美しさには定評がある。恐竜好き、ジョギング好きとしても有名。

 『GREETINGS〜アドルフ・サックスに捧ぐ〜』は11月5日発売。発売記念ライブ「GO!GO!サックス〜GREETINGS〜」を12月20、21日に東京・渋谷のCBGKシブゲキ!!で開催する。

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