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黒幕目指した中国と北朝鮮の誤算 米朝会談中止が示す…圧力路線の正しさと「解決への道」

 ドナルド・トランプ米政権が、6月12日に予定されていた米朝首脳会談の中止を、北朝鮮に書簡で通告した。事実上の「交渉決裂」である。米国が再び、軍事圧力を強めるのは確実だ。朝鮮半島情勢は「一触即発」状態に戻った。

 北朝鮮はこのところ、金桂寛(キム・ゲグァン)第1外務次官が「(米朝会談を)再考する」と発言するなど、対決姿勢を強めていた。

 トランプ大統領は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との米韓首脳会談(22日)でも、北朝鮮の出方を見守る姿勢だった。

 ところが、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が24日、「会談場で会うか、核対決の場で会うかは米国の決心次第だ」との談話を出したのを見て、トランプ氏も「もはや、これまで」と見限ったに違いない。

 北朝鮮は「非核化」という言葉を使ったり、核実験施設を廃棄したりしたが、結局、「何も変わっていなかった」という話である。念のために言えば、核施設は地盤が壊れて使えなくなった施設を派手に爆破してみせたにすぎない。

 ただ、北朝鮮は、中国に強硬姿勢をそそのかされて調子に乗りすぎてしまった可能性はある。トランプ氏は米韓首脳会談の際、記者団に中朝首脳会談(7、8両日)の後、北朝鮮の姿勢が「少し変わった」と述べた。

 中国の習近平国家主席が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対し、「強気で行け」と助言した可能性を示唆したのだ。そうだとすれば、中国の狙いは何だったのか。

 1つは、実質的なキープレーヤーとして、米朝交渉に介入したい。もう1つは、米国との貿易戦争を有利に運びたい、という思惑である。

 北朝鮮が強硬姿勢を続ければ「米国は中国を頼ってくる」とみたのではないか。貿易戦争は実際に米国が妥協して、対中関税引き上げを保留し、棚上げになった。

 だが、北朝鮮は「核対決」などという激しい言葉を持ち出して、突っ走ってしまった。トランプ氏の出方を見誤った可能性がある。それなら、黒幕を目指した中国と北朝鮮の誤算である。

 いずれにせよ、問題の本質は「北朝鮮が本気で核とミサイルを廃棄し、日本人拉致問題も解決し、『いい子』になって、国際社会に参加する気があるかどうか」だ。その兆候は見えない。

 そうだとすれば、仮に米朝首脳会談が実現していたところで、決裂は避けられなかった。

 私はかねてから「米朝会談は中止か、開かれたとしても、少なくとも最初の1回は米国が破談にする可能性が高い」と指摘してきたが、その通りの展開になった。「トランプ氏は会談を成功させるために結局、妥協する」といった見方は完全に誤りだった。

 これで、日本が不安になる理由はない。

 トランプ氏は書簡で、北朝鮮が暴発すれば「米軍の準備は整っている」と警告している。日本は米国と歩調をそろえて、北朝鮮が音を上げるまで「最大限の圧力」路線を続けるだけだ。今回の会談中止は、むしろ圧力路線の正しさと「解決への道」を指し示している。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。

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