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「拉致の解決なくして日本はカネ出さず」 米朝交渉の鍵握った拉致問題

 日本人の拉致問題はどうなるのか。私は先の米朝首脳会談(12日)によって、「一筋の光が見えたのではないか」と思う。

 なぜかと言えば、これまで「核・ミサイル問題とは別」とみられてきた拉致問題が、米朝交渉の重要な要素に組み入れられた。その結果、「拉致問題の解決なくして、米朝交渉の出口もない」状況になったからだ。

 もちろん楽観はできない。だが、少なくとも拉致問題が日本だけの問題でなくなったのは確かである。どういうことか。

 ドナルド・トランプ米大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談後、非核化の費用について「韓国と日本が北朝鮮を支援する」と述べた。トランプ氏は先に、非核化の見返りになる経済支援についても日本や韓国、中国に求め、米国の資金拠出を否定した経緯がある。

 一方で、トランプ氏は首脳会談で正恩氏に拉致問題を提起し、6月14日付の産経新聞の報道によれば、正恩氏に「安倍晋三首相は拉致問題を解決しない限り、支援には応じない」と述べたという。

 以上を整理すれば、トランプ氏は「拉致の解決なくして、日本はカネを出さない」ことを十分理解している。そのうえで、繰り返し、日本の経済支援をチラつかせている。

 今回の米朝交渉は「非核化」と「ミサイル廃棄」が入り口で、出口は「制裁解除」と「経済支援」というのが基本構図だった。それは、トランプ氏が正恩氏に見せたという映画の予告編風ビデオでも明らかだ。

 ビデオは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)が逆回しで地上の発射台に収まると、途端に真っ暗闇だった北朝鮮が明るく輝き出すシーンを象徴的に描いている。トランプ氏は北朝鮮がそんな未来を手にするには拉致問題の解決が不可欠と訴えたのだ。

 言い換えれば、非核化とミサイル廃棄から経済支援に至る道筋の中に、日本の拉致問題が完全にビルトインされた。

 トランプ氏が日本の支援を明言した一方、拉致を解決しなければ日本はカネを出さない方針を言わなかったのは、そこが、「正恩氏の決断を求める核心部分」と承知していたからではないか。

 本当に大事な部分はあえて外で言わずに、相手の決断を待っている。なにせ、相手はのどから手が出るほど日本のカネが欲しいのだ。言ってしまったら、相手のメンツ丸潰れになりかねない。ここでも、トランプ流交渉術が発揮されている。

 正恩氏が非核化に前向きなら、見返りに制裁緩和と経済支援の具体化を求めるだろう。そこでカネの出し手が日本であるためには、拉致を解決しないわけにはいかない。

 安倍首相は非核化費用の負担は当然としているが、北朝鮮とすれば、その程度では納得できないはずだ。2兆円ともささやかれる経済支援が本命に決まっている。

 彼らとすれば、巨額の経済支援を手に入れずに非核化するのは、まったく割に合わない話なのだ。だから、私は「光が見えた」と思う。安倍政権は、ここからが本当の勝負どころである。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。

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