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芥川賞候補“盗作”騒動 講談社VS新潮社の「大いなる」泥仕合に 当初は“大人の解決”方向も…

 18日に選考会が行われる芥川賞の候補作をめぐり、大手出版社同士がモメにモメている。講談社の文芸誌に掲載された北条裕子氏(32)の『美しい顔』に参考文献の記載がなかったことをきっかけに、自社のノンフィクション作品の描写を無断で使われた新潮社とのバトルに発展。当初は“大人の解決”の方向の両社だったが、大いなる泥仕合となった。

 『美しい顔』は東日本大震災で母を亡くした17歳の少女を主人公とし、取材に来る記者らとの関わりを通して変化する内面を描いた作品。講談社主催の第61回群像新人文学賞を受賞し、5月発売の「群像」6月号に掲載され、6月18日付で芥川賞候補作となった。

 しかし、作品中に石井光太氏のノンフィクション『遺体 震災、津波の果てに』(新潮社)や、金菱清氏(東北学院大学教授)が編集した『3・11 慟哭の記録 71人が体感した大津波・原発・巨大地震』(新曜社)など5作品との類似点があることが分かった。

 遺体安置所の場面では、石井氏の『遺体』には《二十体以上の遺体が蓑虫のように毛布にくるまれ一列に並んでいた》(文庫版35ページ)、《うっすらと潮と下水のまじった悪臭が漂う》(同)という表現があるが、『美しい顔』には《すべてがミノ虫みたいになって》(40ページ)、《うっすらと潮と下水のまじった悪臭が流れてくる》(同)と似た描写が出てくる。

 この問題について「群像」発売直後の5月の時点で、講談社側が石井氏や新潮社に事情説明を行っていた。新潮社側は「『群像』誌面での回復措置」や「酷似した箇所の訂正」など5点を要求、講談社もうち3点の要求は履行済みだったとしている。

 しかし、この問題が6月29日付の読売新聞で報じられてから様相が一変した。新潮社が「単に参考文献として記載して解決する問題ではない」と表明したことについて、講談社は「北条氏は大きな衝撃と深い悲しみを覚え、編集部は強い憤りを抱いております」と反発。さらに新潮社は「状況をつくり出した原因があたかも弊社にあるかのような講談社の声明は、本末転倒」と応酬した。

 その後、講談社は、北条氏が妊娠中で4月末の出産予定日を控えていたこともあって対応が遅れたと釈明、今月9日に北条氏の謝罪コメントを公表した。

 著作権法に詳しい前田泰志弁護士は「(小説やノンフィクションといった)ジャンルの問題ではなく、どれだけ文章や表現が似ているかという問題になる」と解説する。

 「一般論として(騒動などが)選考委員の耳に入れば当然、選考に影響が出る」(ある文芸評論家)との観測もある。文学賞の選考を扱った小説としては筒井康隆氏の『大いなる助走』が有名だが、どんな結末を迎えるのか。

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