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貿易戦争は「米中新冷戦」時代の幕開け トランプ政権は「中国は国家的泥棒」と認識

 ドナルド・トランプ米大統領と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が16日、フィンランドの首都ヘルシンキで会談した。大方の予想通り、核軍縮の継続協議を除いて、具体的成果はほとんどなかったに等しいが、今回の米露首脳会談は、トランプ氏の世界観を占う意味で興味深い。

 大胆に言えば、トランプ氏は「米国の戦略的仮想敵は中国」と見定めて、ロシアを中国との連携から切り離そうとしているのではないか。

 それはなぜか。

 いまのロシアは、もはや米国の脅威ではないからだ。それは経済状況に端的に示されている。

 いまロシアの名目国内総生産(GDP)は世界12位、1兆5270億ドル(約171兆6806億円)程度にすぎない(2017年)。中国の12兆140億ドル(約1350兆7340億円)にははるかに及ばず、韓国の1兆5380億ドル(約172兆8865億円)をも下回っている。

 かつての超大国イメージが残っているが、実態は輸出の大半を石油と天然ガスなど1次産品に依存し、長期低迷を続ける中進国なのだ。

 とはいえ、軍事的には大量の核兵器を保有しているから、無視はできない。つまり、トランプ氏からみると、経済でも軍事力でも米国を脅かす存在ではないが、核大国には違いないので、この際、関係を修復して中国の脅威に備えたい。

 もしチャンスがあるなら、中国とロシアの仲を切り裂いて、部分的でも米露連携に持ち込めれば素晴らしい。そう考えているのではないか。

 米国にとって、いまや主敵は中国である。習近平国家主席は13年の初訪米で、当時のオバマ大統領に事実上、太平洋を2分する縄張り分割を提案した。習氏が「太平洋は米中両国を受け入れるのに十分、広い」と言ったセリフは有名だ。

 トランプ政権は、その中国と本格的な貿易戦争に突入した。日本では「11月の中間選挙が終われば、元に戻る」といった見方もあるが、楽観的にすぎる。

 ホワイトハウスの報告書が明らかにしたように、トランプ政権は「中国は知的財産を盗む国家的泥棒」とみている。放置すれば、ハイテク技術が盗まれ続け、経済だけでなく、やがて安全保障も危うくなる。そんな危機感がある。

 南シナ海に軍事基地を建設し続けている中国は、実際の行動でも、米国をアジアから排除したい意図を隠していない。トランプ政権が仕掛けた米中貿易戦争は、これから長く続くであろう「米中新冷戦」時代の幕開けとみるべきだ。

 ちなみに、私は最近、日本を訪れた米政府高官と意見交換したが、この米中新冷戦という現状認識は完全に一致した。

 北朝鮮が「核・ミサイル」問題をめぐる米国との実務者協議で強硬姿勢に転じたのも、米中対立が背景にある。彼らは「中国の支持があれば、米国は怖くない」と居丈高になっているのだ。

 そんな中で開かれたのが、今回の米露首脳会談である。プーチン氏にとっても、経済の重荷を避けるために核軍縮は願ってもない話だったろう。国の実力を背景にした米中露関係の新展開は、今後も目が離せない。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。

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