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格差は総裁選の争点になるか データでは目立った拡大なし 首相との差別化へ焦りの色も

 自民党総裁選で石破茂元幹事長は、安倍晋三首相(党総裁)の地方創生の取り組みについて「勢いが失われた」と指摘した。「大都市や大企業の経済成長の果実を波及させるという考え方は取らない。地方や中小企業が果実を生み出す」と指摘し、中央省庁や大企業の本社の地方移転促進を政策に掲げた。

 現状を確認しておこう。資本金10億円以上の大企業と資本金1億円未満の中小企業のそれぞれの経常利益について、財務省の法人企業統計で見てみよう。

 2012~16年度について、大企業では26・0兆円、34・8兆円、37・2兆円、40・2兆円、42・4兆円と推移した。中小企業も14・7兆円、16・4兆円、17・6兆円、18・0兆円、21・4兆円と伸びており、民主党政権での停滞とは段違いだ。

 しかし、大企業の伸びが大きく、中小企業との差は大きくなっているのは事実だ。これは、金融緩和による円安で輸出中心の大企業はより収益が伸びたためである。民主党政権時代、金融政策のミスで日本だけが円高になり、その結果輸出が振るわなかったのと好対照だ。

 大企業と中小企業の経常収支差をみると、12~16年度で、11・3兆円、18・4兆円、19・6兆円、22・2兆円、21・0兆円と大きくなっている。比率でみても、1・77、2・12、2・11、2・23、1・98と若干大きくなっている。

 賃金はどうか。厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、常用労働者1000人以上を大企業、10~99人を小企業に区分している。月額賃金を12~17年度でみると、男性は大企業で38・1万円、37・9万円、38・2万円、38・8万円、38・5万円、38・3万円と推移。小企業は28・2万円、28・6万円、28・6万円、28・9万円、29・1万円、29・4万円だ。その差は9・9万円、9・3万円、9・6万円、9・9万円、9・4万円、8・9万円。比率では1・35、1・33、1・31、1・34、1・33、1・31。女性も同じ傾向で、大企業と小企業の賃金格差は、変わらないか、若干縮小しているといえる。

 大都市と地方の格差はどうか。内閣府で作成している県民経済計算における1人当たり県民所得は、県民の平均的な年間所得水準を表している。12~14年度について、上位5都道府県と下位5都道府県のそれぞれの平均をみると、上位は345万円、357万円、353万円。下位は226万円、231万円、232万円。その差は、119万円、126万円、121万円と推移。比率をみても、1・53、1・54、1・52とほとんど変化がない。県民所得は高くなっているが、格差の目立った拡大はみられない。

 これらのデータからいえることは、各種の格差はそれほど悪化しておらず、優先順位の低い問題だということだ。格差問題が焦点になるのは、雇用問題が解決されて一定の成長がなされ、ほかに取り上げることがなくなる場合だ。一部野党も、雇用改善でお株が奪われたので、格差問題を取り上げているが、いまいち迫力に欠けている。

 石破氏も、一部野党と同様に安倍首相との差別化を焦るあまり、無理矢理に格差問題を取り上げている印象がある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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