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中国が鍵握る「北の非核化」 習氏に勝ち目ない貿易戦争、北問題が米に妥協促すカードに

 「北朝鮮の非核化」をめぐる米朝交渉で、ドナルド・トランプ米大統領が再び、強硬路線に転換した。いったん発表されたマイク・ポンペオ国務長官の訪朝を直前にキャンセルしたのだ。

 トランプ氏は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との直接会談に期待を残す姿勢も見せているが、このままでは交渉進展は望めない。交渉は事実上、振り出しに戻りつつある。これからどうなるのか。

 私は「鍵を握るのは中国」とみる。トランプ氏は、北朝鮮との非核化交渉を前進させるためにも、中国には一層、強腰で臨む可能性が強い。すなわち、米中貿易戦争はさらに激化する。

 なぜ、そう見るか。

 まず、北朝鮮が非核化をサボっているのは、とっくに明らかだった。7月に開かれたポンペオ氏との実務者協議の後、国営メディアの朝鮮中央通信は「米国はCVID(=完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)だの、申告だの、検証だのといって、一方的で強盗さながらの非核化要求を持ち出した。遺憾極まりない」と非難した。

 北朝鮮が6月の米朝首脳会談で見せた対話姿勢から、一転して強腰に変わったのは、米中貿易戦争が勃発したからだ。正恩氏は3回の中朝首脳会談で中国の支持を取り付けた。正恩氏は「オレの後見人である中国とケンカを始めたなら、オレが米国に強く出ても怖くない」と踏んでいるのだ。

 トランプ氏は米朝交渉の停滞を認め、「黒幕は中国」という認識をはっきりさせた。国務長官の訪朝中止を明らかにしたツイッターでは「(交渉が進まないのは)われわれが中国に貿易問題で強硬姿勢をとっているからでもある」としたうえで、「中国は非核化プロセスを支援しているとは思えない」とも書いた。

 こうなると、米朝交渉の行方は「中国を協力させる方向に引き戻せるかどうか」が鍵になる。正恩氏は中国次第だ。中国が方針転換すれば、正恩氏は腰砕けになる。では、中国は変わるのか。

 私は、トランプ政権が貿易戦争で攻め続ければ、中国は結局、折れてこざるを得ないだろうとみる。この戦いで中国に勝ち目はないからだ。

 トランプ政権は、最終的に中国からの輸入すべて(=2017年で5055億ドル=約56兆2217億円)に制裁関税を課す構えを示している。一方、中国は同規模で報復しようにも、そもそも米国からの輸入(同じく1299億ドル=約14兆4474億円)が足りない。

 不足分を米系企業いじめで対抗するなら、外資の中国離れが加速して、自分のクビを締めるだけだ。米国との貿易戦争で旗色が悪くなれば、習近平国家主席の求心力が低下し、政権の足元を揺るがす可能性すらある。

 そんな中国にとって、北朝鮮問題は米国に妥協を促す貴重なカードになる。非核化で協力する代わりに、貿易戦争の休戦を求めるのだ。北朝鮮の軍事パレードに習氏が出席するかどうかが、次の注目点だ。

 ここは、トランプ氏が攻めまくる局面ではないか。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。

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