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企業の内部留保増加は問題か 有価証券への投資拡大が実態 雇用改善でおのずと解決する

 2017年度の法人企業統計で、利益剰余金が446兆円と過去最高になったと報じられた。企業の内部留保が増え続けている傾向は問題があるのだろうか。

 まず、内部留保を会計的に整理しておこう。内部留保は、企業が得た利益のうち社外流出させずに社内留保した分である。会計的には、負債項目の利益剰余金を指すのが一般的である。ただし、それが資産項目の現預金に対応しているわけでもない。

 法人企業統計の全産業(除く金融保険業)の00年度から17年度までで、現預金の資産合計に対する比率は10・8%から12・6%へと1・8ポイント増加しているが、利益剰余金の負債・純資産合計に対する比率は14・8%から25・4%へと10・6ポイントも増加しており、明確な対応関係はない。

 しかも、設備投資とされる資産項目の有形・無形固定資本にも対応していない。有形・無形固定資本でも同じ指標を見ると、38・0%から28・1%へと9・9ポイントの減少であるので、無形固定資本の増減は利益準備金とは関係ないことがわかる。むしろ、有形・無形固定資本の動向は、金融機関借入や社債の動向に左右されている。当然のこととして、有形・無形固定資本を増やそうとするときには、まずは金融機関借入や社債で資金調達するからだ。

 内部留保はどこにいったかといえば、株式、公社債などの投資その他の資産である。投資その他の資産の資産合計に対する比率は14・8%から25・4%へと10・6ポイント増加しているが、利益剰余金の比率の10・6ポイントの増加と推移がパラレルになっている。

 00年度からのこれらの動きをみると、企業は設備投資をせずに金融機関からの借り入れを返済してきたが、企業収益が上がると有価証券等への投資をしてきたことがわかる。

 最近、企業の内部留保が増加している理由は、いうまでもなくアベノミクスによって企業収益が好調だからだ。企業収益が不調よりも好調のほうがいいに決まっている。これを問題だという人は、その企業収益が労働者に分配されていないということだろう。

 労働者に配分されなかったのは、長引くデフレで失業者が多く、賃金が上昇しなかったからだ。賃金上昇のためには、まずは金融緩和によって失業者を減少させる必要がある。賃金が上がらないと批判する人ほど、まず金融緩和というマクロ経済学の初歩すら分かっていないことに苦笑を禁じ得ない。

 アベノミクスで失業率は下限まで近づいてきたので、最近は賃金も上昇し始めている。今のマクロ経済政策をさらに強化すれば、有価証券への投資が人への投資となり、賃金が本格的に上昇し始めるだろう。と同時に、企業環境が好調であれば、有価証券投資よりも自社の設備投資のほうが収益が良くなるので、流れが転換するだろう。

 このような意味で、内部留保の増加はことさら問題視する必要はなく、おのずと解決されるべき現象なのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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