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「大規模停電」防ぐ備えを 「原発が必要だ」という声も大きくなるが…

 四国、近畿地方を襲った台風21号と、平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震は、大規模停電や断水の怖さを改めて思い知らせた。同じ事態は首都・東京でも起こり得る。危機に備えるために、何が必要なのか。

 わずか3日の間に日本を襲った大災害である。台風21号は大阪府だけで最大約96万戸に及ぶ大停電を引き起こした。大阪府泉南市では、道路の脇にある電柱が軒並み、根こそぎ倒れた。被害は福井、滋賀、京都など2府5県に及び、停電は長期化する見通しという。

 北海道胆振東部地震は一時、北海道全域がブラックアウト(全面停電)になった。異常事態である。

 自然災害は止められない。だが、備えが十分だったかと言えば、改善の余地はある。まず、強風に対する電柱の強度は十分だったのか。地中化が望ましいが、費用の関係で難しいなら、まずは強度を見直すべきだ。

 北海道のブラックアウトは人災の面がある。北海道の電力需要は全体で約380万キロワットであるのに対して、北海道電力は苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所だけで半分近い165万キロワットを賄う体制だった。

 いくら何でも、これは無謀だったのではないか。一極集中を避けてリスクを分散するのは、危機対応のイロハだ。コスト面で有利だったかもしれないが、インフラ基盤を担う会社の判断として妥当とはいえない。

 本州から北海道に電力を供給する「本州連系線」も、全面停電で直流から交流に変換する設備が動かず機能しなかった、という話もある(読売新聞7日朝刊)。これまたお粗末だ。停電になったら設備が機能しないのは素人でも分かる。そもそも、非常時の備えになっていない。

 発電所の設置は電気事業法に基づいて経済産業省が所管している。果たして、政府は危機管理面から電力会社の事業計画をしっかりチェックしていたのか、いなかったのか。第三者の目による検証が不可欠だ。

 政府は個々の発電所を審査していればいいわけではない。地域に対する電力の安定供給確保が最大の使命である。この際、徹底的に問題点を洗い出して、必要なら法改正も視野に入れて対応してほしい。

 電気が足りないという話になると、「だから原発が必要だ」という声も大きくなる。私は反対だ。なぜかといえば、それでは電力供給の一極集中がかえって加速する懸念がある。そもそも、大規模地震の恐ろしさは福島原発で経験済みだ。

 災害だけでなく、テロの心配もある。北朝鮮情勢の緊張が緩んで、テロ攻撃の話が止んでしまったが、今回のブラックアウトは、停電が国民生活を脅かす怖さを実証した。原発だけでなく、電力関連施設全体の安全対策も見直すべきだ。これも政府の仕事である。

 台風で屋根に設置した太陽光パネルが吹き飛んでしまった家庭も多い。こちらは損害保険でカバーできる場合があるようだ。家庭も危機に対する備えが必要だ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。

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