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「マティス氏交代」騒動の“深層” より強腰の「対中強硬派」になれば…

 ドナルド・トランプ米政権に、また閣僚交代の噂が出ている。「ジェームズ・マティス国防長官が辞任するかもしれない」というのだ。

 マティス氏といえば政権発足以来、国防長官を務め、北朝鮮やシリア問題などで中核的な役割を果たしてきた。このタイミングでの辞任観測は何を意味するのか。これが単なる噂と一蹴できないのは、当の大統領自身が火付け役であるからだ。

 トランプ氏は、CBSの人気番組「60ミニッツ」のインタビューで、「(彼は辞任する意向を)私には伝えていなかった」「彼は民主党員のようだ。政権を去るかもしれない。いつかはみな離れる」と語った。

 同氏の辞任観測はこれまでも出ていたが、今回は事情が異なる。米紙ワシントン・ポストの看板記者、ボブ・ウッドワード氏の新著『Fear(恐怖)』で、マティス氏が「小学5年か6年生のように振る舞う。その程度の理解力だ」とトランプ氏を酷評した、と描写された点だ。

 マティス氏は発言を否定しているが、ウォーターゲート事件報道で知られたウッドワード氏の著書となると信頼性が高い。ワシントン・ポストは9月初めに辞任観測を報じていた。

 見逃せないのは、トランプ政権の外交政策との関連である。

 マイク・ペンス副大統領は4日、ワシントンで講演し、中国と全面対決する方針を強調した。

 ペンス氏は貿易問題にとどまらず安全保障面でも、トランプ政権は中国に「断固として立ち向かう」と述べた。これは米ソ冷戦の開始を告げた、ウィンストン・チャーチル英首相の「鉄のカーテン演説」に匹敵する歴史的演説である。

 トランプ政権は、中国との「新しい冷戦に突入した」と言って間違いない。実際、中国は激しく反発し、8日にマイク・ポンペオ国務長官が訪中した際、慣例となっている習近平国家主席との会談が実現しなかった。

 中国との冷戦を戦うとなれば、難しさは北朝鮮問題の比ではない。実質的な通貨の実力を示す購買力平価で測れば、中国の国内総生産(GDP)は米国を抜いて世界一だ。軍事的にも、米国と太平洋を縄張り分割する野心を抱いている。

 そんな中国との戦いを控えて、トランプ氏が「真に自分に忠実な国防長官」に変えて、政権の体制を強化しようと考えてもおかしくない。

 トランプ政権の行方は、日本にとっても重要な意味がある。中国は貿易戦争で米国に勝てない。米国が中国からの輸入品すべてに制裁関税をかけたとしても、中国はそれに匹敵する米国からの輸入品がなく、対抗できないからだ。

 金融、情報戦争でも勝てないだろう。最終的には東アジアの縄張り固めに走る可能性が高い。

 そのとき中国の標的になるのは、沖縄県・尖閣諸島である。ペンス氏は先の演説で米国の尖閣防衛を改めて約束した。

 もしも国防長官交代となれば、次の長官は間違いなく一層強腰の「対中強硬派」になる。安倍晋三政権も対中政策の強化を迫られるだろう。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。 

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