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「統計不正」野党の不毛な追及… 真相究明し改善策に知恵絞るべき

 政府の統計不正問題が広がっている。背景には、担当職員の削減もあるだろう。だが、問題の本質はやはり「官僚の劣化」ではないか。

 例えば、厚生労働省に限ってみても、統計部局の職員はこの10年間で約2割も削減されたという。企業が集中する自治体の現場が忙しいのも理解できる。

 とはいえ、官僚が法律を守らず、全数調査を勝手にサンプル調査に変えていたのは論外だ。コンプライアンス(法令遵守)意識が、まるで感じられない。法律を預かる中央省庁の官僚が、なぜ法律改正を考えなかったのか。

 現場だけではない。厚労省の官房長は特別監察委員会の調査に同席し、質問までしていた。本来なら、自分自身も監察対象になり得る立場ではないか。自分たちが何を問われているのか、官房長自身が分かっていないのである。

 さらに言えば、特別監察委員会の委員長を努めた外部有識者は「官房長の同席はおかしい」と思わなかったのだろうか。委員長は厚労省の関連団体である独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の理事長を努めている。いわば身内だ。この人選からして、そもそも「第三者委員会」としての中立性が疑わしい。

 厚労省といえば、かつて「消えた年金」問題でも、旧社会保険庁のデタラメぶりが問題になった。2006年に成立した第1次安倍晋三政権が崩壊するきっかけになった問題だ。社保庁は結局、解体されて日本年金機構に生まれ変わったが、なお改革途上にある。

 以上を踏まえると、厚労省は現在の体制を維持したままで、自己改革を図れるとは、とても期待できない。大胆に外部の血を入れたうえで、組織を分割するくらいの荒療治をしないことには、コンプライアンス軽視の役所文化は変わらないだろう。

 そう指摘したうえで、残念なのは、野党の対応である。野党は「絶好のネタが転がってきた」とばかり、安倍政権の責任を追及している。だが、それだけでいいのか。

 不正は判明分だけでも、04年から始まっていた。つまり、旧民主党政権時代でも不正があったのだ。にもかかわらず、自分の失敗について、じくじたる思いを感じている様子がない。

 立憲民主党の枝野幸男代表は「私が承知している限り、厚労省で当時仕事をした仲間は実態はまったく伝えられておらず、疑ってしかるべき状況もなかった」と語っている。そこは、安倍政権も同じではないか。

 そうであれば、これは与野党の区別に関係なく、真相を究明して改善策に知恵を絞るべき問題だ。なんでもかんでも「安倍政権が悪い」という話にするのは無理がある。

 共同通信の世論調査(2、3日実施)では、政府の対応が「不十分だ」との回答が83・1%に上った一方、安倍内閣の支持率は45・6%と前回の43・4%から2・2ポイント上昇した。この数字をみると、国民も「旧民主党政権時代でもあった話で、問題の根源は役所のデタラメ仕事」と理解しているようだ。

 野党は不毛な政権追及ではなく、建設的かつ抜本的な統計改革を提言してこそ、存在感を発揮できるはずだ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

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