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【国家の流儀】他国が使う「自衛権」を日本だけが行使できない謎…政府は憲法解釈の見直しを!

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 安倍晋三首相は憲法記念日の3日、民間憲法臨調などが主催した「公開憲法フォーラム」にビデオメッセージを寄せ、「私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきだ」と語った。

 自衛隊「違憲」論の根拠となっているのは、現行憲法9条だが、主に4つの説があることは意外と知られていない。

 第1が、「自衛戦争も含め一切の戦争と、いかなる戦力も認められない」という「自衛隊違憲論」だ。安倍首相が問題視しているのは、この説だ。

 第2が、「そもそも、国際法において独立国家には交戦権は認められているのであって、交戦権を否定する9条は政治的宣言に過ぎない」という説だ。もちろん、自衛隊は合憲だ。自民党も結党当時は、こうした立場に立つ政治家が多かった。

 第3は、「(憲法9条が)自国を守るために必要限度の自衛のための実力、そういうものを持つことを禁止するものとは考えられない」という説。これは、鳩山一郎政権時代の1955年、当時の林修三内閣法制局長官が、衆院内閣委員会で示した「政府見解」だ。

 実は、憲法制定当時、芦田均衆院議員が《前項の目的を達するため》という字句を挿入した。その意図は、9条で禁じられているのは《国際紛争を解決する手段》としての《武力行使》であって、「自衛のためであれば戦力を保持することも、軍隊を保持することも可能だ」という解釈を可能とするためだ。この芦田修正を、林長官は採用したのだと思われる。

 この当時、何と「日本自身の核武装も憲法解釈上は可能な場合もある」とされていたのだ。

 ところが、その後、政府見解は劣化していく。国連憲章や国際法において独立国家に認められた自衛権の行使、戦力の保持を、日本だけは認められないと言い出したのだ。

 それが第4説で、「自衛のためといえども『戦力』の保持は許されないが、戦力に該当しない実力すなわち『自衛力』の保持は禁じられておらず、自衛抗争は可能」というものだ。これは、佐藤栄作政権時代の72年に、当時の高辻正己内閣法制局長官が示した政府見解だ。

 この見解のもとで、自衛隊は「合憲」だが、「戦力」(国際法上の軍隊)ではないので、韓国やインドネシアといった他国の軍隊のように相手国を攻撃する能力を持つことも、有事に関する法制を研究することもダメだ-とされるようになっていく。

 繰り返す。韓国やインドネシアなど、他の国が行使している自衛権を、なぜ日本だけが行使できないのか。憲法の明文改正は必要だが、その前に、まず政府の憲法解釈を55年当時の林内閣法制局長官時代のものに戻すべきではないだろうか。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。他の著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『天皇家 百五十年の戦い』(ビジネス社)など多数。

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