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「増税延期」絶好のチャンス逃した野党 党首討論も貿易戦争、イラン情勢の質問なし

 安倍晋三首相と、野党党首らによる党首討論が19日、国会で開かれた。野党の出方によっては、安倍首相が衆院解散・総選挙を決断し、参院選とのダブル選になる可能性も取り沙汰されていたが、蓋を開けてみれば、そんな展開には程遠かった。

 野党の追及は穏当すぎて「拍子抜け」と言ってもいいくらいである。普段は野党に厳しい私でも「それでいいのか。野党はもっと頑張れ!」と言いたくなった。

 なぜ、野党が厳しくなかったかと言えば、安倍首相を追及しすぎて、「そこまで言うなら、総選挙で決着を付けようじゃないか」と切り返される事態を恐れたからだろう。マスコミでは「ダブル選見送り」観測が相次いでいた。あえて「寝た子を起こす」ようなマネはしたくなかったに違いない。

 本来であれば、野党は衆院で多数を握らない限り、政権を奪取できないのだから、解散を怖がるどころか、積極的に受けて立たなければならない。にもかかわらず、穏当作戦に出たのは「選挙に勝つ自信がない表れ」である。

 では、野党は何を追及したのか。

 金融庁審議会の報告書を発端にした「老後資金2000万円」問題だ。それも報告の中身ではなく、麻生太郎金融相が報告書を受け取らなかった点を「見たくない事実はなかったことにして、ごまかす姿勢」(立憲民主党の枝野幸男代表)などと攻め立てた。

 私に言わせれば、そもそも、この話は出発点がバカバカしい。

 立憲民主党の蓮舫副代表は「年金で100年安心はウソだったのか」と国会で質問したが、「年金だけで老後は安心」などと本気で思っている国民がどれほどいるのか。多くの人々は貯蓄と年金を合わせて老後の生活を考えている。

 実際、問題になった報告書も、高齢夫婦で平均2250万円の貯蓄があるのを前提に議論を展開している。2000万円の不足があったとしても、貯蓄でちょうど埋め合わせが可能になる数字ではないか。私は報告内容に特段、違和感を覚えない。

 それを、「2000万円の不足は大変だ」などと騒ぎ立てるのは、自分は高い給料と退職金を手にしている野党と一部マスコミの偽善と建前論だ。実に嫌な感じである。

 それはともかく、衆院解散について安倍首相に質問したのは、維新の片山虎之助共同代表だけだった。多くの国民が関心を抱いている消費税引き上げ問題や、米国と中国の貿易戦争、イラン情勢などは誰からも質問が出なかった。

 これでは、党首討論が国民の知りたい疑問に答えている、とは言えない。それとも、野党のみなさんは国際情勢に関心がないのだろうか。

 そう、私は「おそらく関心がないのだ」とみている。野党はもっぱら安倍政権の失政をたたく機会を狙っている。中国やイランがどうなろうと、政権攻撃には役に立たない、とみているのだ。

 だが、中国とイランの情勢こそが、消費税引き上げを延期に持ち込む最大で最後の材料ではないか。ここは安倍首相の認識をただす絶好のチャンスだった。それを、みすみす見過ごした野党のセンスのなさに、ガックリする。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

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