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政府も自治体も問題だらけ…進まぬ「火山シェルター」設置

 御嶽山で戦後最大の火山の悲劇が起きたのは2014年9月だった。犠牲者はシェルター(待避壕)のない御嶽山で逃げまどい、そして63人が命を失った。

 政府の対応は素早かった。すぐに消防庁に調べさせた。その結果、気象庁が常時監視している47火山のうちの35火山には、登山者や観光客が逃げ込める施設が整備されていないことが分かった。

 そして内閣府は2015年12月に、シェルター設置の手引をまとめた。政府が初めて具体的な指針を示したものだ。

 しかしその後、設置は遅々として進んでいない。

 この2月になってから、九州・普賢岳など雲仙岳ではシェルター設置を白紙に戻すことになった。費用負担や技術面で困難と判断したものだ。

 現在、雲仙岳の登山道にはシェルターは設置されていない。雲仙普賢岳では1991年の火砕流で43人が亡くなった。御嶽山の前は戦後最大の火山災害だった。

 シェルターの設置が進まない理由がある。ひとつには地元自治体の負担は半分だが、費用が高いことだ。シェルター自体は200万円台で、そう高くはない。だが、ヘリコプターを使った設置には2000万円もかかる。地元が負担するにはあまりに大きい。

 もうひとつは火山の特殊性だ。火山は県境にあることが多くて、主体となる各火山防災協議会に複数の自治体や地元の意向が絡み、意思決定が難しい。

 たとえば、群馬・長野県境にある浅間山は県境にある。いま、4つのシェルターがあるが、すべては長野県側だ。浅間山の登山道は長野県側にしかない。両県で費用負担するのか、国や市町村が負担してくれるのかが問題になっている。

 群馬県でも、車道のある草津白根山には13カ所も設置している。だが、浅間山は両県とも車道がない。

 東京・三宅島には小さいものは10人でいっぱいになるが、合計3000平方メートルものシェルターがある。

 一方で、北海道・有珠(うす)山のように小規模なシェルターが1カ所しかないところもある。シェルターがない常時監視火山は7割以上にもなっている。いまだシェルターがない火山には富士山も含まれている。

 シェルターそのものは技術的に進歩している。防弾チョッキに使われる「アラミド繊維」という特殊な布では、大きさ10センチの噴石が時速300キロで衝突しても貫通しないという。ヘルメットや、ましてリュックをかぶったくらいでは防げない噴石を、シェルターならば防げる可能性がある。

 設置が進まない理由には「過剰な安全対策を取れば危険な印象を持たれかねない」というシェルター反対の地元の観光業界の意見もある。

 現在の火山学では次にどの火山が噴火するか分からない。そのうえ、いつ噴火してもおかしくない火山も多い。悠長なことは言っていられまい。

 かけ声倒れの政府と問題だらけの地元自治体の間で犠牲になるのは、いつも登山者やスキー客や観光客なのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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