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米国「通貨安関税」の狙いは、中国を本気で追い詰めること 変動相場制の日本は対象外に

 米商務省は、自国通貨を割安に誘導する国からの輸入品に対し、相殺関税をかけるルールを決定したと発表した。中国などを牽制(けんせい)する狙いと報じられている。

 米国が中国製品に関税をかけた場合、その製品のドル建て価格が変わらなければ、米国内の価格が上昇する。その場合、関税を負担するのは米国の消費者になる。

 しかし、現実には、中国製品の米国内での価格はあまり上昇していない。中国製品のドル建て価格が低下しているからだ。これは、米国へ輸出している中国企業が輸出価格を下げたことと、中国人民元が安くなったことによるものだ。

 米中貿易戦争が報復関税により激化した2018年以降、人民元の対ドルレートは1割程度(平均的にはその半分)安くなり、米国による関税引き上げの一部を相殺している。

 ここで、中国は為替について、変動相場制でなく、管理制であることに留意する必要がある。

 変動相場制であるためには、内外の資本取引が自由化されていることが最低条件であるが、生産手段の国有を核心政策とする共産主義中国では、資本取引の自由化は国の根幹に触れるので、到底できない。これは、中国が共産党体制である限り、まともな為替自由化はあり得ないことを意味する。

 本コラムでは、この点が中国のアキレス腱(けん)となっていることを繰り返してきたが、今回の米国による通貨安関税は中国の弱点をしっかり把握していることを示している。

 もちろん標準的な為替理論では、変動相場制において為替は二国間の金融政策の差で決まる。つまり、一国が国内事情により金融緩和すると、当該国の通貨が増加し、他国通貨に比して相対的に増えるので、希少性が減り通貨が安くなる。

 米国も変動相場制であり、国内がデフレになれば金融緩和を行うだろう。その時にはドル安になる。だから、この標準理論を承知していないはずないので、「通貨安」の条件として、政府が為替介入に関与していることなどとともに、「独立した中央銀行の金融政策は通常、含まれない」と明確化した。

 なお、「通貨安」の基準として、特定通貨がドルや主要通貨で構成する通貨バスケット相場に対して安くなったこととしている。この新ルールは、4日に公布され、60日後に施行される予定だ。

 こうした措置は、制度的にも為替介入せざるを得ない中国が主たるターゲットであることは明らかだ。

 変動相場制である日本などが通貨安になっても、インフレ目標があらかじめ設定され、金融政策が独立したものとして行われた結果であれば、原則として相殺関税が課されることはないだろう。

 11月の大統領選を控えた今の時期に、体制のアキレス腱である為替まで踏み込んだ米国は、本気で中国を追い詰めるようだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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