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【編集局から】ピアノでも電話ボックスでも…みんなの祈りは変わらない

 先週のNHK「ドキュメント72時間」は神戸駅に置かれたストリートピアノを取り上げていた。世界的に広がっているイベントで、役目を終えたピアノを公共スペースに置き、自由に弾いてもらう。

 音大の元女子学生が「上手だな」と覗き込むと、20年ぶりの同級生だったり、病気になった夫に「行っておいで」と背中を押され、たどたどしくも一生懸命に練習する女性、ラジオ体操第1で周りを引き込む男性…。それぞれの思いが胸を打つ。神戸だからだろうか、阪神淡路大震災の思いがにじむ。誰に弾いてあげているのかな。

 東日本大震災で発生から2日目に取材で入った岩手県大槌町を思い出した。橋の上の巨大な漁船や壊滅した役場。山肌にはパトカーや消防車が突き刺さっていた。

 しばらくして庭師の男性が、自宅に「メモリアルガーデン」という誰でも入れる庭を整備し、白い「風の電話ボックス」を置いた。犠牲者の冥福を祈り、行方不明者の親族たちが立ち直るきっかけになればとの思いからだったという。

 ボックスに入った方々は、つながっていない電話を耳に、空を見上げて誰かに何かを語りかけていた。「元気?」「こっちはみんな元気だよ」

 ピアノでも電話ボックスでも、みんなの祈りは変わらない。(光)

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