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人工植毛、「永久」求めるよりメンテナンスが大事

 今回は少し古い話をしよう。

 読者の皆さんは「白鯨」という小説を知っているかな? 映画化もされた作品でね。アメリカを出発した捕鯨船が白くて巨大なマッコウクジラと死闘を繰り広げるというストーリーなんだ。このクジラが体中に銛を撃ち込まれても死なないくらい強くて、ボクも小説を読んでとても印象に残ったんだ。

 さて、ボクが高須クリニックを開業した当時、世間では男性の薄毛解決策として人工植毛に注目が集まっていた。人工の髪の毛を薄くなった頭頂部や前頭部に植え付けるというものだね。業界では、「人工植毛はこれからの成長産業だ」ともいわれていて、ボクもこのころは業者と付き合いがあった。

 ただ人工植毛には課題があった。手術で植えた毛をいかに長持ちさせるかということだ。「ニドー」という会社が大手で、カツラをつけるよりも自然に髪を増やしたいと願う男性たちに大うけしたんだけど、そのうちに「すぐに抜けてしまう。もっと長持ちさせてほしい」という要望が多く寄せられるようになった。ボクも何回か試してみたんだけど、やっぱり抜けてしまうんだよね。

 そこで出たアイデアが、白鯨に刺さる銛のように強力な“かえし”を付けて、頭皮に植え付けるという手法だったんだ。「それは画期的だ!」と話題になって研究が進み、こちらもものすごく流行した。

 この手法を研究した会社からボクの所に「先生にわが社のマークを考えてほしい」と要望が来て、「白鯨のマークにしよう!」と提案した。まあ、ボクの案は却下されて、すぐに関係も切れちゃったんだけどね。

 強力なかえしのパワーでちょっとやそっとじゃ抜けなくなったこの手法が登場したことで、「すぐに抜けてしまうニドーはもう古い」とまでいわれるようになった。ところが、今度は抜けないことが大問題になった。植え付けた所が炎症を起こしたり、化膿してしまうケースが相次いだからだ。裁判も起きたよ。

 そして結局、ニドーやカツラメーカーは生き残ったけど、植毛をとにかく長持ちさせようと「永久に抜けない」とうたっていた所はどんどんつぶれていった。

 これは美容整形でも一緒。患者さんは一度の手術で永久を求めがちだけど、やっぱり術後も定期的なチェックとメンテナンスが必要なんだ。がん治療もそうでしょ?

 ■高須克弥(たかす・かつや) 美容外科医で医学博士。美容外科「高須クリニック」院長。愛知県出身。日本に「脂肪吸引手術」を普及させた先駆者で、「Yes、高須クリニック」のCMフレーズでもおなじみ。芸能界、財界、政界と幅広い人脈を持つ。著書多数、最新刊は「大炎上」(扶桑社新書)。

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