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異例づくめだった北朝鮮の張成沢氏粛清 識者はミサイル発射を強く懸念

ニュースカテゴリ:政治・社会

異例づくめだった北朝鮮の張成沢氏粛清 識者はミサイル発射を強く懸念

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13日付の北の機関紙「労働新聞」で、張成沢氏(右から2人目)の処刑直前とされる写真が掲載された。恐怖渦巻く金正恩体制に何が起こっているのか(ロイター)  北朝鮮が異常事態に突入した。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の叔父で、失脚が伝えられていた張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長が12日、電撃的に死刑執行されたのだ。ロイヤルファミリーの一員をも粛清する恐怖政治で、正恩氏の独裁権力が強化されるだけでなく、それを後押しする朝鮮人民軍の力が突出するとみられる。今後、核実験やミサイル発射などで、日本を含む周辺諸国に対し、実力を誇示する危険も出てきた。

 朝鮮中央通信は13日朝、北朝鮮の治安機関、国家安全保衛部が12日、張氏に対する特別軍事裁判を開き、「国家転覆の陰謀行為」を理由に死刑判決を下し、刑は即時執行されたと報じた。

 北朝鮮が、軍事裁判実施や刑執行を公にするのは極めて異例。

 韓国情報機関、国家情報院から報告を受けた与党議員は13日、「機関銃で射殺されたと推定される」と述べた。

 張氏への判決文には、「将軍様(金正日=キム・ジョンイル=総書記)が亡くなると、張は政権への野心を実現するため策動した」「審理で『不満を(人々に)抱かせようと試みた』などとクーデターの企てを白状した」「平壌の都市開発を妨害し、地下資源の不適当な売却を強行するなど『売国行為』を行った」「正恩氏への権力継承が決まった2010年9月の党代表者会で、張がいいかげんに拍手をし、傲慢(ごうまん)不遜に行動した」などとあった。

 朝鮮労働党の機関紙、労働新聞は13日、手錠をかけられた張氏が制服姿の軍人に引き立てられてうなだれる裁判の写真を掲載した。同紙は「犬にも劣る醜悪な人間のクズ」とすさまじい罵詈雑言を浴びせている。

 金正日総書記の死去から17日で2年となるのを前に、実力者とされた張氏の影響力を速やかに消し去り、正恩体制の強化を図ったとみられる。今後、張氏周辺に対する粛清も加速しそうだ。

 同通信は、張氏が「金第1書記の絶対的権威に挑戦した」と指摘。首相として経済運営の実権を握ることを企み、「共和国(北朝鮮)を内部から崩壊させ、最高権力を掌握しようとした」と強調した。

 元韓国海軍少佐で、拓殖大学国際開発研究所の高永●(=吉を2つヨコに並べる)(コ・ヨンチョル)研究員は「異常事態だ。張氏は親戚だけに、1、2年軟禁されても、復活する可能性があるとみていた」といい、こう続ける。

 「張氏は昨年、労働党組織指導部の幹部を追い出した。恨みを持った幹部に、朝鮮人民軍の崔竜海(チェ・リョンヘ)総政治局長が接近し、張氏の失脚計画を練ったとされる。正恩氏の祖父、金日成(キム・イルソン)国家主席は5回、父の金正日総書記は3回の大規模な粛清をして権力基盤を強めた。これで、正恩氏の『唯一指導者』としての力は強まる。ただ、叔父を即日死刑にしたのは、驚いた。よほど張氏に対して許せないことがあったのだろう」

 崔氏の父は、金日成氏に仕えた崔玄(チェ・ヒョン)元人民武力部長。どう猛な性格と日成氏への忠誠心で知られ、いつも拳銃を持ち歩き、日成氏に失礼な態度を取った人間をその場で撃ち殺したという逸話もある。正恩氏としては、親戚よりも、崔一族の忠誠心を信頼したのか。

 それにしても、今回の冷血・残忍な粛清劇には、北朝鮮の専門家も驚いている。

 北朝鮮情報専門サイト「デイリーNK」東京支局長の高英起(コウ・ヨンギ)氏は「ここまで大々的な粛清は、金日成時代の1960〜70年代以来。歴史的な政治事件といえる。父の正日氏でさえ、これほど露骨な強権発動はしなかった」と語る。

 慢性的な資金難にあえぐ北朝鮮は、部分的な開放政策を進めるなど、外資導入に積極的だった。このような粛清を行えば対外的なイメージ悪化は避けられない。どんな事情があったのか。

 高氏は「正恩氏が感情的に爆発した。つまりキレたと考えるのが自然だ。今後、ブレーキ役の張氏がいなくなったことで、暴走は一層加速するだろう。ミサイル開発を推し進め、さらなる強硬外交を展開していくはずだ」と語る。

 裁判から処刑執行に至るまでの経緯に、北朝鮮の異変を感じ取ったのは「コリア・レポート」編集長の辺真一(ピョン・ジンイル)氏だ。

 「これまでは、群衆を集めた人民裁判で死刑が決まるのが一般的な流れだった。ところが、今回は密室の中での軍事裁判で刑が下され、発表後すぐに執行された。いずれも異例の流れだ。死刑裁定を下したのは軍事委員19人。つまり、今回の裁判は軍部が仕切ったということだ」

 張氏の粛清劇を、崔氏率いる朝鮮人民軍が主導したとすれば、正恩氏の軍事シフトが加速する可能性は高い。

 辺氏は「今回の一件で、軍部の台頭が改めて裏付けられた。正恩氏が軍事力を背景にした力の政治を推し進めていくのは間違いない。ミサイル発射も近い。早ければ来年早々。正日氏の誕生日で、北の記念日である2月16日にも発射のボタンが押されるかもしれない」と危ぶんでいる。

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