二階氏、人事の「秘密」握り影響力増大? “政高党低”からもの言う党の復権

存在感を放つ二階氏

 自民党の二階俊博幹事長が「夏の政局」で存在感を発揮している。東京都議選で同党は歴史的惨敗を喫したが、二階氏は「安倍晋三首相支持」をいち早く表明し、流れをつくった。一方で、大勝した地域政党「都民ファーストの会」率いる小池百合子都知事との太いパイプも印象付けている。「最後の党人派大物」として党内外の不平不満を抑えながら、「安倍一強」と言われた“政高党低”状態から、もの言う党の復権を目指すのか。

 「(内閣支持率の急落は)東京都議選の延長線にある。多少のことはやむを得ない。信頼回復に全力を尽くす」「党勢回復にマジックはない。しっかりやりますから、ご心配なく」

 二階氏は11日の記者会見で、こう語った。独特の威圧感があった。

 都議選大敗後の4日午前11時、二階氏は派閥の緊急会合を開いた。重鎮の1人から「これが衆院選だったら、国政の土台が大きく揺らいでいた。官邸は危機感を持っているのかッ!」などと厳しい意見が出た。こうした声に耳を傾けながら、二階氏は最後に「今後とも安倍首相を支持していく」という派閥の方針を取りまとめた。

 二階氏はそのまま官邸に乗り込み、安倍首相と1時間、菅義偉官房長官と10分間会談した。具体的に何が話されたのか、内容は漏れていない。

 ただ、二階氏に近い国会議員は「局面転換のための、内閣改造・党役員人事の中身について、相当突っ込んだ話をしたはずだ」「当然、自身の続投についても安倍首相の了承を取ったはずだ」といい、こう明かした。

 「二階氏は、都議選投開票日の2日夜、東京・四谷の超高級フランス料理店『オテル・ドゥ・ミクニ』で、安倍首相と麻生太郎副総理兼財務相、菅氏、甘利明前経済再生担当相が会食したことに、強い不快感を持っていた。あの威圧感で抗議した可能性もある」

 それを裏付けるのか、安倍首相は欧州歴訪中の9日夜、同行記者団に、次のように語った。

 「来月早々に断行し、人心を一新する考えだ。結果を出すことができたのは、継続性と安定感だ。『骨格』はコロコロ替えるべきではない」

 麻生氏と菅氏、二階氏を留任させる意向を明らかにしたものだ。

 二階氏は、和歌山県議を経て、1983年に衆院議員に初当選した。田中角栄元首相の薫陶を受けるが、93年に小沢一郎氏とともに自民党を離党した。新生党、新進党、自由党と小沢氏と行動をともにするが、その後、決別。保守党を経て、2003年に自民党に復党した。

 この間、運輸政務次官や運輸相、経産相、自民党総務会長などを歴任し、昨年8月に自民党幹事長に抜擢(ばってき)された。党内外だけでなく、海外にも広がる幅広い人脈を駆使した抜群の調整力のため、かつての野中広務氏に匹敵する「最後の党人派大物」と呼ばれている。

 これまで、二階氏の“政局千里眼”は冴えていた。

 来秋の党総裁選について、「安倍首相の3選支持」を真っ先に打ち出し、党規約を改定した。安全保障関連法や消費増税延期の際も、いの一番に「首相支持」を表明し、党内の流れを決めた。安倍首相との距離が縮まるにつれ、二階氏率いる二階派(志帥会、43人)の勢力は拡大した。

 現在、都議選ショックと、内閣支持率の急落は、解散権と党の公認権を一手に握ってきた安倍首相の「一強体制」を揺さぶっている。

 事態を打開するには手荒い外科手術(=大幅な内閣改造・党役員人事など)が必要だが、それにはショックも伴う。永田町関係者は「安倍首相は、波乱が予想される党内外の抑え、クッション役を二階氏に期待したのだろう」と話した。

 冒頭の「しっかりやりますから、ご心配なく」という発言は、「党内はご心配なく。任せておけ」という、二階氏の宣言にも聞こえる。

 都議選で、自民党を打ち負かした小池氏も“二階人脈”に連なる1人だ。新進党、自由党、保守党で同じ釜のメシを食い、小池氏の自民党入りを後押しした。2020年東京五輪・パラリンピックの成功や、築地市場の移転問題でも、「官邸-自民党-都庁」のパイプ役が期待されている。

 二階氏は今後、どんな存在になるのか。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「今回の内閣改造・党人事の最大の焦点は『幹事長人事』だった」といい、続けた。

 「絶大な権力を持つ自民党幹事長のイスを、菅氏や甘利氏、岸田文雄外相も狙っていた。二階氏は4日に官邸に乗り込んだ際、安倍首相から留任を取り付けたうえで、憲法改正に必要な人事についても話し合った可能性がある。人事に関する“秘密”を握ったとすれば、二階氏の影響力はこれまで以上に増す。安倍首相は、二階氏と歩調を合わせることで、苦境を打開する方法を探ろうとしているのではないか。これは、官邸主導から、党主導に移行する過程かもしれない」

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