官邸VS財務省 内閣支持率は危険水域 「ポスト安倍」は増税派ばかり…財政再建に動く石破氏、岸田氏、進次郎氏

財務省との距離感も注目される(右上から時計回りに)安倍首相、岸田氏、小泉氏、石破氏(合成写真)

 安倍晋三内閣の支持率が下落するなか、自民党内やメディアなどで「ポスト安倍」が取り沙汰されている。政権批判のトーンを強めたり沈黙を貫いたりとさまざまだが、財政再建や消費税率引き上げを主張するなど、いわゆる「増税派」ばかりが目立つ。安倍政権は「消費増税の凍結」という切り札を携え、最強官庁・財務省と対決姿勢も辞さない構えだが、増税派が政権を握り、「霞が関主導」政治に逆戻りして、日本経済は大丈夫なのか。

 報道各社の世論調査で、安倍内閣の支持率が30%未満の「危険水域」に突入してきた。

 時事通信が7~10日に実施した調査では、安倍内閣の支持率は前月比15・2ポイント減の29・9%となった。ANNが15、16日に行った調査でも、先月から8・7ポイント下落し、29・2%になった。いずれも、2012年の第2次政権発足以来、初の20%台となった。

 今後、安倍首相が厳しい政権運営を強いられるのは必至で、「ポスト安倍」候補らがうごめき始めている。

 「加計学園」問題や、東京都議選での自民党惨敗などを受けて、メディアに頻繁に登場しているのが石破茂元幹事長だ。ワイドショーでも「ポスト安倍」の筆頭格として名前が出ている。

 石破氏は6月中旬に開かれた、アベノミクスに否定的な自民党有志による「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(野田毅会長)の2回目の会合にも出席した。記者団に「原油安と円安に頼る経済政策であってはならない」と述べた。

 ブルームバーグが6月26日に行ったインタビューで、石破氏は、安倍政権が2度にわたり消費増税を延期したことについて、「消費税をきちんと上げるという意思が本当にあるのか」と疑問を呈し、次期衆院選で「また『消費税を上げない』などと言えば、この国は本当にどうなるのか」と懸念を示したという。

 完全な「増税派」というしかない。

 基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標維持を主張するなど、財政規律を重視する立場の石破氏だが、果たして「イシバノミクス」は日本経済をよくできるのか。

 経済政策に詳しい上武大教授の田中秀臣氏は「石破氏は以前から『金融緩和でマネーを供給すると、ハイパーインフレになる』と主張している。消費増税を前提とした経済政策という発想がうかがえる。『加計学園』問題では、政権を批判するスタンスに立ち、(岩盤規制にドリルで穴を開けるような)規制緩和に積極的には見えない」と解説する。

 さらに、「アベノミクスの『積極的な金融緩和』と『機動的な財政政策』『規制緩和など成長戦略』という3本の矢といずれも逆向きで、そのまま政策として実行すると日本は経済破綻してしまいかねない」と話す。

 「ポスト安倍」の有力候補である岸田文雄外相も「格差に適切に対応することが重要だ」といい、アベノミクスを修正すべきだとしている。

 田中氏は「経済格差の原因は、高齢化や不況の長期化だが、相対的貧困率も子供の貧困率も改善しているのが実情だ」と語る。

 安倍首相が8月3日に断行する方針の内閣改造で、閣僚や官房副長官での起用が取り沙汰され、「将来の首相候補」と目されている小泉進次郎衆院議員についても、田中氏の評価は厳しい。

 「進次郎氏は『こども保険』という名前の実質増税策を打ち出している。石破氏よりも増税スタンスははっきりしている。日本経済にとってマイナスになるような政策を、いま実行しようとしている分、危険度が高いともいえる。善意で発想しているのだろうが、国民目線に立っているのか」

 安倍政権では、経産官僚が力を持ち、かつて「最強官庁」と呼ばれた財務省は冷遇されてきた。安倍首相や菅義偉官房長官は消費税増税に消極的だが、財務省は麻生太郎副総理兼財務相とともに抵抗してきた。現在の政治状況は、財務省にとっては主導権奪還の好機なのだ。

 こうしてみると、「ポスト安倍」の面々は「いずれも財務省を筆頭とする官僚依存の傾向が強い。2度の増税延期で財務省と闘ってきた安倍首相との違いは大きい」(田中氏)というのだ。

 安倍政権としては今後、支持率下落を受けて「経済重視に回帰する」とみられる。ただ、経済政策は今後の政治スケジュールとも密接にかかわってくる。

 元内閣参事官で嘉悦大教授の高橋洋一氏は「秋の臨時国会では、経済政策の強化のために補正予算が打ち出されるだろう」とみる。

 有効求人倍率や失業率、企業業績は改善しているが、14年4月の消費税率8%への引き上げ後の消費低迷の悪影響が尾を引き、デフレの完全脱却や2%のインフレ目標実現にはほど遠い状況だ。日銀の量的緩和継続とともに、財政面での手当ても必要になる。

 支持率の回復につなげるとの思惑に加え、18年政局に向けた環境整備の意味合いもあるという。そこでは、消費増税に関する判断が極めて重大な案件となってくる。

 前出の高橋氏は次のように続ける。

 「安倍政権の『20年の憲法改正』という目標から逆算すると、憲法改正の是非を問う国民投票は、18年後半に衆院選とのダブルで実施される可能性が高い。19年10月に予定されている消費税率10%へ増税の是非も争点となり、安倍政権は『増税凍結』を仕掛けてくるのではないか」

 18年9月には自民党総裁の2度目の任期満了も迎える。

 高橋氏は「『反安倍勢力が総裁選で勝つ』『衆院選で与党が敗れる』『国民投票で過半数に届かない』のいずれかになれば、10%への消費税増税が実施されることになるだろう。これまで2度増税が延期されている財務省側にとっては好都合ではないか」とみる。

 「反アベノミクス」が実施された場合も、日本経済について高橋氏はこう話している。

 「再び深刻なデフレに転落し、『失われた20年』の再来となるだろう。歴代政権でも最高レベルになっている雇用環境も次第に悪化していくと予想される。失業率が上昇すれば、自殺率が上昇し、強盗などの犯罪も増えるという統計もあり、社会不安が高まるのは避けられない」

Read more