「日報隠蔽」密告者は官邸周辺か “異例”調査対象の稲田氏、目立つ特異な言動 指揮管理能力欠如も

21日、報道陣に囲まれる稲田氏。官邸(上)からも見放され、存在感が薄れていく(合成写真)

 稲田朋美防衛相が完全に見放された。南スーダンPKO(国連平和維持活動)部隊の日報隠蔽問題で、防衛省による特別防衛監察の対象外だった稲田氏が、異例の調査対象となったのだ。混乱の背景として、防衛省・自衛隊内の暗闘とともに、稲田氏の特異な言動も指摘されている。与野党から稲田氏の辞任論・更迭論が噴出するなか、日報隠蔽問題のリーク元(密告者)として、陸上自衛隊幹部ではなく、安倍晋三政権に不満を持つ官邸周辺と分析する関係者もいる。

 「(日報の)隠蔽を了承したこともないし、陸自の保管の報告を受けたことはない」「私はいつでも協力するし、その旨は監察にも伝えてある」「私の責任の下で事実を解明し、説明責任を果たしていきたい」

 稲田氏は21日午前の記者会見で、疑惑を否定した。防衛監察本部の調査にも協力するという。

 菅義偉官房長官は前日の記者会見で、「すべての疑問に答えられる調査をすることは当然のことだ」「防衛監察本部から求めがあれば、稲田氏ら政務三役が協力することになる」と言い切った。

 官邸主導で、稲田氏を異例の調査対象とした裏には、稲田氏の指揮管理能力の欠如に対する憤りが感じられる。

 日報隠蔽問題は今後、防衛監察本部が、稲田氏や事務方トップの黒江哲郎事務次官、岡部俊哉陸上幕僚長らの関与をどう認定するか、防衛省が行う処分にどう影響するかが焦点となる。防衛省は監察結果を来週28日にも公表したい考えだが、調査の進み具合で、ずれ込む可能性もある。

 同問題は24、25両日、安倍首相が出席する衆参両院の予算委員会の集中審議でも焦点となる。

 このため、自民党幹部は20日、「稲田氏による日報隠蔽が事実なら大変なことになる。(8月3日の)内閣改造を待たず、自発的に辞任するのも選択肢だ」と語った。

 民進党の蓮舫代表も同日の記者会見で「政府の信頼性が根底から覆されかねない」と、安倍首相に即時罷免を要求した。

 稲田氏が、防衛省・自衛隊から“追放”される可能性が出てきた。

 問題が混乱した背景としては、防衛省内局(背広組)と、陸海空自の幕僚監部(制服組)との深い溝や、統合幕僚長ポストをめぐる陸自と海上自衛隊、航空自衛隊の思惑を要因とする声もある。

 特別防衛監察で、陸自の文書管理のあり方だけが問題視される展開に、陸自側に「稲田氏にも報告していた」という強い不満があったとされる。

 また、稲田氏が昨年8月の就任直後から特異な言動を続けてきたことも大きい。防衛省・自衛隊内の信頼が失墜するなか、日報隠蔽問題で、背広、制服組だけが悪者にされ、稲田氏らが政治的責任を取ろうとしないことへの不満も鬱積していた。

 このため、稲田氏が、日報隠蔽を了承したとの疑惑が報道機関に流れた背景について、「稲田氏らに不満を持つ陸自幹部が情報源ではないか」という報道もある。

 だが、防衛省・自衛隊に精通する防衛問題研究家の桜林美佐氏は「可能性はゼロではないが、陸自を含む防衛省・自衛隊側とは考えにくい」といい、続けた。

 「自衛隊は長年、『憲法違反』『税金泥棒』と批判され、つらい思いをしてきた。このため、自分たちの味方になってくれる歴代防衛相は徹底的に支えてきた。前川喜平・前文科事務次官が『座右の銘は、面従腹背』と言ったとき、『あり得ない!』と最も怒ったのが自衛官ではないか。そもそも、自衛隊は『戦う集団』であり、上司に逆らうことは考えられない」

 「稲田氏は国会で打ち合わせた以外のことを答弁したり、政務の選挙応援で『自衛隊の選挙利用』と受け取れる話をするなど、フォローしきれない面もあった。

『天然ボケ』と思える部分もあった。だからこそ、必死に支えてきた。8月の内閣改造で交代必至なのに、どうして最後になって稲田氏に反旗を翻すのか」(桜林氏)

 確かに、防衛省・自衛隊は、民主党政権時代に「史上最低」といわれた田中直紀防衛相も懸命に支えてきた。

 田中氏は2012年1月、参院予算委員会で行われた外交問題の集中審議中、無断退席して20分近く行方不明となった。席に戻った後、「風邪薬を飲んでいた」と釈明したが、実は、議員食堂でコーヒーを飲んでいたという。その後、「在籍(在任)期間は国会内でコーヒーを飲まない決意で臨みたい」と語り、あきれられた。

 では、稲田氏の情報を流したのは誰なのか。

 永田町関係者は「官邸内外の『安倍降ろし』に加担する人物ではないか」といい、分析した。

 「防衛省による特別防衛監察の報告書の大枠は完成し、首相官邸には届けられている。一連の経緯が分かれば、防衛省内の幹部会議などの情報も把握できるはずだ。内閣支持率が危険水域まで落ちるなか、安倍政権に不満を持つ人物や勢力が、さらに政権を追い込むため仕掛けた工作では。極めて、政局的な動きのように感じる」

 この証言と合致するかは不明だが、フジテレビは19日、日報問題の「監察結果の概要」を、画像付きでスクープした。

 自衛隊は、国民の命と平和な暮らしを守るための実力組織である。北朝鮮をはじめとする、東アジア情勢が緊迫化するなか、一刻も早い、日報隠蔽問題の解明と、事態の沈静化が求められる。

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