激変した「ポスト安倍」めぐる党内力学 岸田氏最右翼も、河野氏と野田氏が“乱入” 石破氏は無視

入閣した河野氏(写真)と野田氏、党務に専念する岸田氏。「ポスト安倍」はこの3人から出るのか、それとも…

 安倍晋三首相が3日に断行した、内閣改造・自民党役員人事の“老獪(ろうかい)さ”が注目されている。「ポスト安倍」を競う岸田文雄前外相と石破茂元幹事長のうち、岸田氏は希望通りに政調会長に据えたが、後ろから鉄砲を撃つような言動を繰り返した石破氏は無視したのだ。さらに、安倍政権に批判的だった野田聖子、河野太郎両衆院議員を、総務相と外相に抜擢(ばってき)して有力候補に押し上げた。「脱お友達」がキーワードとされる人事だが、「ポスト安倍」をめぐる党内力学は激変した。

 「引き続き、安倍内閣をしっかり支えていくことが、私にとって役割であり、その役割をしっかりと務めていきたい」

 岸田氏は3日、新政調会長として党本部で開かれた記者会見に臨み、こう宣言した。2012年12月の第2次安倍政権発足から4年8カ月、外相という大任を務め上げ、希望ポストに就任した表情は晴れやかだった。

 安倍首相は来年9月に予定される自民党総裁選での3選を目指しており、今回の改造人事で、政権への信頼を取り戻したい考えだ。首相は3日夕の記者会見で「政権を奪還したときの原点に立ち返り、謙虚に丁寧に国民の負託に応えるために全力を尽くす」と語った。

 新内閣の布陣とともに、「ポスト安倍」候補の処遇も注目された。

 最右翼に躍り出たのは岸田氏だ。安倍内閣は「森友、加計学園」問題などで支持率が急落したが、岸田氏は一貫して安倍首相を支持してきた。希望した党三役を射止めたうえ、岸田派から閣僚4人を輩出した。

 永田町関係者は「安倍首相は一時、岸田氏に外相と防衛相を兼務させた。通常はあり得ず、『絶対的信頼』を意味する。総裁3選に向けた勢力固めともいえるが、『次はあなただ』という意思表示だろう。岸田氏も安倍首相からの政権禅譲を狙っている」と分析する。

 野田氏と河野氏も、「ポスト安倍」候補として再浮上した印象が強い。

 特に、野田氏は重要閣僚である総務相への起用で、一気に息を吹き返す可能性がある。野田氏は一昨年9月の総裁選で「安倍一強」に対抗して出馬を模索したが、推薦人20人を確保できなかった。

 野田氏は3日夜、来年の総裁選について、「総裁選は権力闘争であると同時に、3年に一度だけは候補者がすべての政策を戦わせ、国民とつながる場面だ。よき習慣をなくしてはいけない。『次も必ず出る』ということは申し上げていく」と、官邸で記者団に語った。

 まずは閣僚として成果を上げてからだろう。野田氏が、東京都の小池百合子知事と近いこともプラスになりそうだ。

 河野氏は長く、「党内左派の首相候補」と言われてきた。世代的には、岸田氏の次の世代だが、東アジア情勢が緊迫化するなか、外相として突出した存在感を発揮できれば「万が一」もあり得る。

 一方、石破氏率いる水月会(19人)は、斎藤健農水相以外はポストは回ってこなかった。政策通として知られ、当選3回の斎藤氏を大抜擢(ばってき)し、石破氏を牽制(けんせい)したという見方もできる。

 安倍首相は、石破氏に近かったが、水月会には参加しなかった2人(小此木八郎国家公安委員長、梶山弘志地方創生担当相)も入閣させた。

 一連の人事は、単なる「脱お友達」「仕事人」というだけでなく、よく考え抜かれた巧妙なものだ。「人事の佐藤」と呼ばれた、安倍首相の大叔父、佐藤栄作元首相の老獪な手腕を参考にした形跡もある。

 今回の人事で、「ポスト安倍」をめぐる党内力学はどう変わったのか。

 政治評論家の伊藤達美氏は「禅譲を期待する岸田氏と、『反安倍』を鮮明にした石破氏との争いになるだろう」といい、続けた。

 「野田、河野両氏の起用で、2人も『ポスト安倍』に名乗りを上げるだろうが、やはり中心となるのは岸田、石破両氏だ。安倍首相は総裁3選を目指しているが、内閣支持率次第で難しくなる。その場合、岸田、石破両氏の争いになる。野田氏も当然出るだろう」

 政治評論家の森田実氏は先月中旬、安倍首相と二階俊博幹事長と官邸で昼食をともにした。その際、吉田茂元首相と佐藤氏の例を引きながら、「長期政権の維持には人事をやりながら、常に『国民に信を問う』姿勢が大事だ」と助言したという。

 森田氏はやや違う視点で、「自民党は、フランスで起こった『マクロン現象』を警戒すべきだ」といい、解説した。

 「マクロン仏大統領は今年6月の国民議会選挙で新党を立ち上げて圧勝し、伝統的な左右政党は完敗した。自民党はこれまで2度下野したが、原因は『保守分裂』だ。安倍首相が、野田、河野両氏を閣内に取り込み、反安倍勢力を分断したことで、当面の危機は避けられた。来年の総裁選で党内にしこりが残った場合、反安倍グループと小池都知事が一緒になり、新党を結成し、勝負に出る可能性が大いにある」