麻生氏、菅氏との“暗闘”負けた 内閣改造や醜聞対応などで対立、永田町に流れる「安倍首相との代理戦争」のウラ

せめぎあう麻生氏(右)と菅氏

 麻生太郎副総理兼財務相と、菅義偉官房長官との“暗闘”が続いている。安倍晋三首相にとって、2人は側近中の側近で、「政権の柱」といえるが、内閣改造や醜聞対応などで対立し、その亀裂が広がりつつあるというのだ。永田町に流れる「安倍首相と麻生氏の代理戦争」という見方とは。自民党は茨城県知事選(27日投開票)で勝ち、10月の「衆院トリプル補欠選挙」での勝利を目指すが、麻生、菅両氏の対立が抜き差しならなくなれば、安倍政権の基盤を揺るがしかねない一大事となりそうだ。

 「真摯(しんし)に10年先を見据えた訴えが皆さんの支持をいただいた。人口減少対策、それが最大の課題だ。挑戦する茨城にしたい」

 茨城県知事選で勝利した、経産省出身で無所属新人の元IT企業役員、大井川和彦氏(53)=自民、公明推薦=はこう語った。

 自民党は、内閣改造後初となる大型地方選挙に必勝を期していた。東京都議選惨敗の悪い流れを断ち切り、10月22日投開票の衆院青森4区、新潟5区、愛媛3区の「トリプル補選」に弾みをつけたい考えだった。

 このため、岸田文雄政調会長や、野田聖子総務相、加藤勝信厚労相、小泉進次郎筆頭副幹事長らを重点投入し、「新しいリーダーを誕生させて歴史を変えよう」(進次郎氏)と訴えた。

 茨城県は、菅氏が「政治の師」と仰ぐ、梶山静六元官房長官の地元である。菅氏は今回の選挙に深く関わったが、県連と太いパイプを持つとされる麻生氏は、「あまり存在感がなかった」(県連関係者)という。

 麻生氏は、吉田茂元首相を祖父に持ち、皇室とも縁戚という「名家出身の世襲議員」だが、菅氏は秋田出身で、集団就職で上京した「たたき上げの苦労人」である。政治的背景の違いのためか、安倍政権の重要な政治判断をめぐって、2人は激しく対立してきた。

 昨年春、消費税率10%への引き上げ延期をめぐり、政権与党内で激論が戦わされていた。

 財務省を率いる麻生氏は予定通り、2017年4月の増税実施を強く求め、「再延期するなら、(16年7月の参院選に合わせて)衆院を解散して(衆参ダブル選で)国民の信を問うべきだ」と主張した。一方、菅氏は消費税増税だけでなく、公明党に配慮して衆参ダブル選にも猛反対した。

 最終的に、安倍首相は菅氏の判断に軍配を上げ、19年10月への再延期を決めた。

 麻生、菅両氏は昨年10月の衆院福岡6区補選でも、意中の候補をそれぞれ擁立して大激突した。

 麻生氏は、日本獣医師会会長で、福岡県議の蔵内勇夫氏の長男を担ぎ、菅氏は、鳩山邦夫元総務相の次男、二郎氏を支援した。菅氏は「鳩山氏が優勢」との調査を根拠に、麻生氏側に“撤退”を促したが、ガンとして引かなかったという。結果として全面衝突となり、鳩山氏が勝利した。

 「森友・加計学園」問題や、防衛省・自衛隊の「日報」問題などが連続炸裂(さくれつ)し、安倍内閣の支持率は30%未満の「危険水域」まで下落した。

 安倍首相は今月3日、局面転換のため内閣改造に踏み切った。この水面下でも、麻生氏と菅氏は衝突したとされる。

 菅氏は、第2次安倍政権発足以来、一貫して「政権の危機管理」を担当していたが、森友・加計問題では、強気の対応が国民の不信を買った。

 麻生氏は改造前、「菅氏を更迭して、代わりに加藤1億総活躍相(当時)を官房長官に据えるべきだ」と、安倍首相に迫ったとされる。

 永田町関係者は「左派メディアは『菅氏批判』を徹底的にやっていた。世論もそういうムードだった。麻生氏は『菅氏が対応を間違った結果、内閣支持率が下がった』と判断し、直言したのだろう」といい、続けた。

 「ただ、それまでの両氏の対立を考えると、別の側面も見えてくる。麻生氏は、自分をしのぐ力をつけつつある菅氏を政権中枢から外したかったのではないか。自分は内閣に残り、新しい官房長官に加藤氏を据えれば、自分が操れると踏んだとも考えられる」

 麻生氏は内閣改造前、派閥を合併で拡大させ、佐藤勉元総務相と、田中和徳衆院議員の入閣を要請していたとされる。

 だが、フタを開けてみれば、菅氏は留任し、麻生派から入閣したのは河野太郎外相と、鈴木俊一五輪相だった。安倍首相は、麻生氏の要求を受け入れなかったのだ。

 別の永田町関係者は「麻生、菅両氏の対立は、実は『麻生氏と安倍首相の代理戦争』ともいえそうだ。安倍内閣の支持率低迷の原因となった森友、加計問題だが、実は麻生氏周辺の影がチラつく。推測だが、麻生氏は『再び総理の座を手に入れたい』と狙っているのではないか。安倍首相が、菅氏を留任させたのは『菅氏は裏切らない』と確信しているからだ」

 麻生氏が、安倍首相の寝首をかく可能性はあるのか。