徴用工設置をはじめ、憎悪拡大再生産する韓国の動き

提供:NEWSポストセブン 

 徴用工問題が、日韓の新たな火種になりつつある。文在寅大統領は国と国との約束として解決したはずの、徴用工の個人請求権まで容認する発言をして日韓関係を揺るがせている。慰安婦像だけでなく、徴用工像の中心的な制作者であるキム夫妻に直撃したジャーナリスト・竹中明洋氏が、韓国国内で急速に広がる徴用工の設置の様子を追った。

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 龍山駅前に徴用工像が設置された同じ8月12日、ソウルに近い仁川市内の公園にも徴用工像が設置された。地元の労働組合や市民団体が寄付を集めて実現に至ったという。

 仁川にも取材に向かった。像の制作者こそキム夫妻ではなかったが、こちらも場所はすでに設置されている慰安婦像の隣り。やはり日本の植民地支配の象徴として徴用工を慰安婦と並んで記憶させたいようだ。

 文在寅大統領は、8月15日の光復節の記念式典で演説し、徴用工問題を慰安婦問題と並んで解決すべき日本の歴史問題とした上で、「強制動員の苦痛は続いている。被害規模の全てが明らかにされていない」「まだ十分でない部分は政府と民間が協力し、解決せねばならない。今後、南北関係が改善すれば、南北共同で強制動員被害の実態調査を検討する」と述べた。

 徴用工への賠償問題は、1965年の日韓国交正常化にともなう請求権協定で解決されたはずである。ところが、文大統領は8月17日の会見では、個人の請求権はまだ残っていると発言した。

 8月に入り光州地裁は、韓国人女性らが戦時中に名古屋の軍需工場での労働に強制徴用されたとして損害賠償を求めた裁判で、三菱重工に支払いを命じる判決を相次いで出した。今後は文政権の意向を汲み、同様の判決が相次ぐことも予想される。そうなれば、日本企業の韓国での活動に重大な影響を及ぼしかねない。

 折しも韓国では、長崎県の端島(軍艦島)炭鉱に徴用された韓国人労働者らの脱出劇を描いた映画『軍艦島』が7月末に公開され、観客動員数が600万人を超える大ヒットとなっている。

 光復節の前日には、慰安婦像のレプリカを乗せたバスがソウル中心部を走り始めた。日本大使館に近い地区にバスが差しかかると、慰安婦問題の歴史を説明する放送が車内で流れ、少女が村から連れ出される様子を再現した悲痛な叫び声に思わず耳を塞ぎたくなる。

 過去の歴史に真摯に向き合うことの大切さは我々も決して忘れてはならない。だが、徴用工像の設置をはじめ憎悪を拡大再生産するかのような動きが急速に韓国で広がることを懸念せざるを得ない。

 これが文大統領の強調する「未来志向の日韓関係」につながるはずがない。

 ●たけなか・あきひろ/1973年山口県生まれ。北海道大学卒業、東京大学大学院修士課程中退、ロシア・サンクトペテルブルク大学留学。在ウズベキスタン日本大使館専門調査員、NHK記者、衆議院議員秘書、「週刊文春」記者などを経てフリーランスに。近著に『沖縄を売った男』。

 ※SAPIO2017年10月号

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