大前研一氏、小選挙区主張した田原総一朗氏&筑紫哲也氏に意見

提供:NEWSポストセブン 

 解散・総選挙が近づいている。民進党の新しい代表に選ばれた前原誠司氏は代表選の中で「次期衆院選で政権交代を目指す」と述べた。しかし、近著『武器としての経済学』が話題になっている経営コンサルタントの大前研一氏は、この目標自体が大間違いであり、手強い“健全野党”を目指すべきだと指摘している。大前氏が、民進党の未来を展望する。

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 民進党が本来、自民党に対してぶつけるべきは「国家運営の仕掛け」を根本から変える論議のはずである。

 なぜ日本は“変われない国”になったのか? その最大の原因は1994年の「小選挙区制」導入であり、それを主導した小沢一郎自由党代表(元・民主党代表)の大罪だと私は考えている。

 当時のマスコミは、ジャーナリストの田原総一朗氏やニュースキャスターの筑紫哲也氏らが旗振り役となり、定数2人以上の中選挙区制から定数1人の小選挙区制に移行して政権交代が可能な二大政党制を実現しなければならない、と主張していた。それに賛成すれば「改革派」とされ、反対した私などは「守旧派」というレッテルを貼られた。だが実際、細川護煕内閣への政権交代は中選挙区制のまま実現している。

 では、小選挙区制が導入された結果、何が起きたか? 風が吹くと一気にブームが巻き起こるため、政治が非常に不安定になるとともに、「○○チルドレン」というド素人が多数当選し、スキャンダルを連発して税金の無駄遣いを重ねている。

 また、中選挙区制では加藤紘一氏や近藤鉄雄氏、愛知和男氏といった天下国家や外交を論じる政治家が登場して議席を維持することができたが、小選挙区制になってからは次の選挙で当選することしか眼中になく、「おらが村」に予算を引っ張ってくるだけの小粒な“運び屋”ばかりになってしまった。

 そもそも私は統治機構を道州制にして、選挙制度は大選挙区制にすべきだと主張してきた。日本には市町村が1700以上もあるのだから地方行政はそれらの自治体の首長と議員に任せて、国会議員は道州レベルで選べばよいという提案だ。そうなれば、国会議員は「おらが村」の道路や橋などの話をしても始まらないので、天下国家しか論じなくなる。大選挙区制にして初めて、国会議員は国の将来や外交をどうするかといった国政レベルの議論ができると思うのだ。

 その一つの理想形はドイツである。ドイツは連邦制で、16州ごとに立法・行政・司法や経済・産業政策などを決めることができ、16州を束ねる連邦政府の首相は外交、国防など国の長期的な方向だけを差配する。この制度によってシュミット、コール、シュレーダー、メルケルといった国際的にも高く評価される優れた首相が登場し、長期政権を実現している。

 日本にドイツのような統治機構を導入することは、小選挙区制で選ばれた国会議員には無理なので、かつて私が主張した「新・薩長連合」のような地方の知事たちによる“革命”しかないと思う。それは東京都の小池百合子知事ら大都市の知事がタッグを組み、中央集権の打破と地方主権に本気で取り組めばできるかもしれない。その時、野党は自民党との政権争いに汲々とするのではなく、地方からの革命を支援する側に立てばよいのだ。

 民進党の「政策集2016」には「道州制をめざします」と書いてある。ならば安倍一強を崩すためにも、民進党は健全野党となって「小選挙区制廃止、中選挙区制復活」の議論をぶつけて自治体の首長の一斉蜂起を助ければよいのである。前原代表には、そういう思い切った方針転換を断行してもらいたい。

 ※週刊ポスト2017年9月29日号

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