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【昭和のことば】独特で珍妙なポーズとともに生まれた「シェー」(昭和38年)

 いまの50代あたりの読者の方々の幼き日のアルバムには、必ずしやこの「シェー」のポーズをしたモノクロ写真が貼ってあることだろう。独特で珍妙なポーズとともに生まれたこの感嘆詞は、奇才、赤塚不二夫御大が漫画『おそ松くん』の作中で考案したものである。

 なんでも、赤塚先生によると、原稿を取りに来た担当者が「ヒェーッ」と言ったのだが、歯が抜けていたせいで「シェーッ」と聞こえたのがヒントであるとか(『週刊読売』昭和41年)。後には、映画のなかで怪獣ゴジラがこのポーズをやってのけたり、当時の浩宮様が万博会場で「シェー」のポーズをしたことが、写真入りで紹介されたりもした。

 この年の主な事件は、「国産テレビアニメ第1号『鉄腕アトム』放送開始」「人口105万人の新都市、北九州市が発足」「吉展ちゃん事件発生」「大阪駅前に日本初の横断歩道橋完成」「瓶詰め生ビール、サントリービール発売」「黒部川第四発電所(黒四ダム)完工式」「全国戦没者追悼式が日比谷公会堂で開催」「米原潜寄港反対集会を横須賀・佐世保で開催」「新1000円札(伊藤博文肖像)発行」「三井三池鉱業所三川鉱で大爆発」「プロレスラー力道山、やくざに刺され死亡」など。

 この年の映画は『五番町夕霧楼』『アラビアのロレンス』。大鵬が大相撲初の6場所連続優勝。テレビでは『ロンパールーム』『夫婦善哉』などが話題。経済企画庁は、『経済白書〈先進国への道〉』を発表し、高成長、高福祉型経済への移行を強調。まさに高度経済成長時代のはじまりを告げる年であった。

 「シェー」の持ち主は、イヤミ(井矢見)。出っ歯で「おフランス」帰りを鼻にかけている、恐ろしくキザな人間。こんなキャラクターが先進国に追いつけ追い越せの当時の日本に生まれ、注目を浴びていたことが、この流行語のさらなるおもしろさだ。なんともしゃれた流行ではないか。 (中丸謙一朗)

 〈昭和38(1963)年の流行歌〉 「高校三年生」(舟木一夫)「こんにちは赤ちゃん」(梓みちよ)「見上げてごらん夜の星を」(坂本九)

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