記事詳細

【昭和のことば】岸信介氏の孫である安倍首相、現在の政治状況と不気味な共通点「声なき声」(昭和35年)

 この年、日米安全保障条約改定が大きな山場を迎えた。改定阻止の流れは院外にも波及し、新安保条約への反対に加え、岸信介内閣の「高姿勢」に抗議して、退陣を迫る世論が巻き起こり、国会議事堂はデモの波に包囲された。

 しかし、岸信介首相はどこまでも強気で、渦中に行われた記者会見で、「国民の“声なき声”はわたしを支持していると信ずる」と述べた。国会を解散して信を問えば自民党が多数を占める情勢にあったが、もはや問題は安保改定だけではなく、一連の政治姿勢に対する反発の総決算としての「退陣要求」であった。

 この年の主な事件は、「民主社会党結成(委員長西尾末広)」「ソニー、世界最初のトランジスター・テレビ発売。8インチ6万9800円」「太平洋沿岸にチリ津波来襲。死者139人」「安保改定阻止。全学連反主流派、国会突入をはかり警官隊と衝突」「33万人のデモ隊国会を徹夜で包囲。6月19日午前0時、新安保条約および関係協定を自然承認」「岸信介首相辞意を表明。第1次池田勇人内閣成立」「NHKほか民放4社、カラーテレビ本放送開始」「浅沼稲次郎社会党委員長、東京・日比谷の演説会で、右翼少年に刺殺される」「第2次池田内閣成立。閣議で『国民所得倍増計画』決定」など。

 この年の映画は『おとうと』『悪い奴ほどよく眠る』。本は倉橋由美子の『バルタイ』、松本清張の『ゼロの焦点』、謝国権『性生活の知恵』など。ダッコちゃんブームが最高潮。日清「チキンラーメン」が発売、インスタント時代の幕開けを迎えた。

 岸信介の孫である安倍晋三内閣も、数の論理で、ある意味安定した政権に見える。だが、その「姿勢」は、さまざまな反発も呼んでいる。「声なき声」というかつての流行語の存在。現在の政治状況との共通点も、なんだか不気味である。

 「声なき声」を過信し、「届かない声」を無視するのだとしたら、それは恐ろしい未来を呼ぶ。 (中丸謙一朗)

 〈昭和35(1960)年の流行歌〉 「アカシアの雨がやむとき」(西田佐知子)「霧笛が俺を呼んでいる」(赤木圭一郎)「誰よりも君を愛す」(松尾和子&和田弘とマヒナスターズ)

zakzakの最新情報をSNSで受け取ろう