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北朝鮮の「愛国者」はこうして金正恩氏に背を向けた (1/3ページ)

 悪名高き北朝鮮の治安機関の恐喝まがいの取り締まりが、一人の「愛国者」を「裏切者」に変えた。

 北朝鮮は世界でも類を見ない監視国家だ。上からの監視のみならず、住民同士を互いに監視させ、少しでも「異常」な言動が見られれば、すぐに当局に報告される仕組みが築かれている。この監視システムを支えるのが警察にあたる人民保安省(保安省)であり、秘密警察の国家保衛省(保衛省)だ。

 とりわけ保衛省は、拷問、処刑などの人権侵害が常態化している強制収容所も運営しており、住民から恐れられている。

 (参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

 平安北道(ピョンアンブクト)の定州(チョンジュ)で生まれ育った女性のAさんは、咸鏡北道(ハムギョンブクト)に引っ越して20年間暮らした。そして2015年の夏に脱北し、その翌年に韓国にやって来た。

 Aさんは、北朝鮮では比較的恵まれた暮らしをしていた。軍人の家系で、実の兄は金正日政権時代、軍隊に豚肉12トンを提供したことで国から二重英雄の称号を授与された。血筋(出身成分)もいいことから、人民班長(町内会の会長)を20年間務め、結婚した夫も幹部だった。

 ところがある日、次女が忽然と姿を消した。脱北して中国に行ったものと思われたが、特に問題になることはなかった。そして今度は、長女一家も姿を消した。このことがきっかけとなり、国に忠誠を尽くしていたAさんの人生が狂い始める。

 ■恐喝ビジネスも

 北朝鮮では、一家全員が行方をくらますと、脱北したものとみなされる。身内から脱北者が出ると、連座制で収容所送りになりかねない。韓国のNGO、北朝鮮人権情報センターの調査によると、政治犯収容所には連座制による収容者が約3割に上ると見られるという。

 (参考記事:連座制で「この世の地獄」強制収容所送り…暴かれる北朝鮮の人権蹂躙

デイリーNKジャパン
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