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米乱射 IS犯行声明は「便乗」か 容疑者との関係捜査困難に

 【カイロ=佐藤貴生】米西部ネバダ州ラスベガスで起きた銃乱射テロで、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)傘下の通信社が犯行声明を出した直後に、米捜査当局が「テロ犯と国際テロ組織とのつながりは見つかっていない」と述べた。ISは声明で、テロ犯は「数カ月前にイスラム教に改宗した」としたが、声明が事実でなかったとすれば、脅威を拡散するために今後も関与していない事件に便乗し、犯行声明を出す可能性があることを示している。

 ISは9月28日、欧米への攻撃を指示する指導者、アブバクル・バグダーディ容疑者の肉声とされる音声メッセージをインターネット上で公開したばかりだ。声明を出した背景に、このタイミングを逃さず劣勢が続くイラクやシリアで戦うメンバーの士気を鼓舞し、支持者を引きつける狙いもにじむ。

 ラスベガスの事件に先立ち1日、仏マルセイユの国鉄駅で、チュニジア出身とされる男がナイフで通行人に襲いかかり、女性2人が死亡した事件でも、ISが犯行声明を出した。仏検察当局は容疑者とISとの関係はまだ不明だとしている。

 ISは指導者の音声メッセージ公開翌日の先月29日、米露や英仏などを名指しして「人の集まる場所」が標的になると警告。「爆発を起こし、車が群衆に向かって暴走し、首をかき切る」といった文章をネット上に流していた。米国旗を羽織った人の背中でナイフを構える合成写真に、「呼びかけに応じて彼らを刺せ」との一文を添えたものもあった。

 ラスベガスやマルセイユの事件の犯人がISと無関係だったとしても、「呼びかけ通りにテロが相次いでいる」と、事実を糊塗して自らの宣伝に努めている可能性はゼロではない。

 イラクやシリアで劣勢が続く中、IS傘下の通信社は、虚偽の犯行声明を出して戦闘員や支持者の引き締めを図る「プロパガンダ機関」になった-との見方が最近、聞かれるようになった。

 その一方で、ISが組織的テロを起こす能力を失っている-と断定する証拠があるわけではない。

 組織の弱体化により、テロを起こす能力があるメンバーが都市に潜伏しやすくなる面もあろう。欧米などの捜査当局にとり、テロ犯とISの結びつきを見極めるのがますます困難になりつつある。

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