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【zak女の雄叫び】《zak女の雄叫び お題は「春」》電通過労自殺から2年 「芳紀」を散らした娘の生きた証 (1/2ページ)

 「芳紀(ほうき)」という言葉が、頭に浮かんだ。いまどき、めったに使わない表現だろう。女性の若く美しいころを表し、匂い立つような花の盛り、人生の春を思わせる言葉だ。

 電通の新入社員で、平成27年12月に過労自殺した高橋まつりさん=当時(24)。母の幸美さん(54)が昨年11月、代理人弁護士とともに刊行した『過労死ゼロの社会を-高橋まつりさんはなぜ亡くなったのか』(連合出版)を読んだ。冒頭のカラー口絵には、在りし日のまつりさんの写真が数多く掲載されている。

 かわいい赤ちゃんのころ、元気な小学生時代からはじまり、女性らしさが増した大学時代の姿はまさに芳紀、という輝きがあふれている。

 母子家庭の経済的困難を乗り越え、私立の中高一貫校に進学。6年間、授業料免除の特待生を維持した。予備校に通わず、高校の全面的なバックアップで東大に現役合格。母娘の絆は強く、東京での暮らしや友人の話を聞いて、「まつりのおかげで、まるでもうひとつの人生を生きているような気がしていた」と幸美さんはつづっている。

 事件の報道で目にしてきた顔写真の傍らには、幸美さんがいた。就職前に家族旅行したバンコクでの2ショットだという。背景を消して遺影にするのは、どれほどつらかったことだろう。

 まつりさんは履歴書に、「逆境に強い。強靱なストレス耐性。できない理由を見つけて文句を言うのではなく、強い信念を持って努力すれば解決できる、というのが私の信条である」と記していた。SNS発信などから明らかになった1日2時間、週10時間程度の睡眠といった勤務実態を読むと、自力で夢を実現してきた彼女が亡くなったのは、鬱病の悪化による判断力低下がもたらした病死であったことがよく分かる。

 「頑張ってきた人間は頑張り続けなければいけない運命なんだよね。大学を卒業してもゴールではなく、もっともっと仕事して成果を求められる仕事に就かなければならない。一生働かなきゃいけない」。亡くなる前、まつりさんはこんなふうに話していたという。

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