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【長谷川幸洋「ニュースの核心」】トランプ氏は正恩氏と韓国に一杯くわされた? 米、軍事攻撃の“大義”づくりも (2/2ページ)

 肝心の「非核化」の中身もあいまいだ。

 北朝鮮が唱えてきた朝鮮半島の非核化とは「韓国からの米国の核撤去と米軍基地の査察」「在韓米軍の撤退」を含んでいる。そんな話に米国が乗れるわけがない。

 非核化の中身を詰めずに、いきなり首脳が対話すれば、暗礁に乗り上げるのは必至だ。事務レベル協議で「北は結局、核を放棄する意思はない」と分かれば、会談自体がご破算になる可能性もある。そうなれば、対話カードは「時間稼ぎ」に使われただけになる。

 とはいえ、実は米国にも首脳会談を求める動機があった。軍事攻撃に踏み切るには「米国は最後まで外交的解決に努力した」という言い訳が必要になるからだ。

 レックス・ティラーソン国務長官は3月9日、米国が「北朝鮮と接触を重ねていた」ことを認めている。それは外交当局として、当然の行動である。トランプ氏がそれを知らない訳がない。

 トランプ氏は10日、記者団に「(米朝首脳会談は)大きな成功を収めるだろう」と語り、自信を深めている様子だ。ただ、同時に「すぐ席を立つかもしれない」とも言っている。

 トランプ氏が会談受け入れを即答したとき、ジェームズ・マティス国防長官ら側近はそろって危険性を警告したという。自分が「騙された」と分かれば、一挙に軍事攻撃路線が息を吹き返す可能性も残っている。

 正恩氏の側は「ついに大統領を交渉の場に引きずり出した」「これで米朝が対等の立場になった」「やはり核の威力だ」と有頂天になっているのではないか。

 最終決着はまだ先だ。対話の行方はまったく不透明である。5月までには相当な紆余(うよ)曲折があるに違いない。

 安倍晋三首相は4月に訪米してトランプ氏と会談する。日本は「核の凍結」では話にならない。核施設そのものの廃棄が不可欠だ。まして米国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)廃棄で話をまとめ、核を容認してしまうような展開は絶対に阻止する必要がある。

 ここは日本にとっても正念場である。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。東京新聞論説委員。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。