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【長谷川幸洋「ニュースの核心」】「すべて持ち越し」で終わった米朝首脳会談 結局は政治的パフォーマンス優先、拉致問題でも不吉な予感 (2/2ページ)

 不吉な予感は、拉致問題への対応にもにじんでいる。

 トランプ氏は「会談で拉致問題を提起した」と述べたが、正恩氏の反応は不明だ。北朝鮮は直前まで、国営メディアを通じて「拉致問題は解決済み」との姿勢を繰り返し、強調している。

 拉致問題は、他国民の平和と生命、安全を脅かしている点で本質的に核・ミサイル問題と同じだ。すなわち、正恩氏が改心して「いい子」になるつもりがない証拠である。これでは、非核化の言葉も信用できない。

 今回の声明が「板門店宣言」を確認した点も気になる。

 南北朝鮮が宣言に従って朝鮮戦争を年内にも終結し、将来の南北統一に踏み出せば、それは「赤い朝鮮半島」の誕生を意味する。そうなれば、在韓米軍の撤退も迫られるだろう。

 トランプ氏は「赤い朝鮮半島」も「在韓米軍撤退」も容認するつもりなのだろうか。

 それでも、今後に期待するとすれば、何が言えるか。トランプ氏は「核の脅威がなくなるまで、制裁を続ける」と言明した。正恩氏が制裁解除を目指すなら、自ら動かざるを得ない。「核兵器や核施設の申告」「国外搬出と廃棄の検証」という本番はそこから始まる。

 ただ、それでも「北朝鮮の申告を信用できるのか」という難問が待ち受けている。正恩氏は拉致問題について動くかどうか。安倍晋三政権は一段と難しい局面を迎える結果になった。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。

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