記事詳細

【勝負師たちの系譜】自分が本当にタイトルを取れるのか… 王座戦、挑戦者を阻む“重み” (1/2ページ)

★王座戦(2)

 王座戦は私にとっては縁のある棋戦である。唯一、タイトル戦を戦った経験のある棋戦だからだ。

 平成元年、1989年のことで、私が36歳の時。決勝で当時台頭してきた55年組の一人、南芳一王将(当時)を破っての挑戦だった。

 今考えてみると、この年は羽生善治竜王が19歳で初めてタイトル(竜王)を奪取し、その後は羽生世代が将棋界を4半世紀にわたって席巻したから、谷間であるわれわれの世代は、この頃が唯一の活躍の期間だったかもしれない。

 結局、われわれの世代でタイトルに手が届いたのは、福崎文吾九段が十段位と王座。田中寅彦九段が棋聖1期だけである。

 私の相手は中原誠王座(当時)だった。一時は2勝1敗まで追い込んだから、初めてタイトル戦に出た棋士の気持ちは少しわかるつもりだ。挑戦者はタイトル保持者と同時に、タイトルの重みとも戦わなければならない。

 自分が本当にタイトルを取れるのだろうか。それ以前に、伝統あるタイトル保持者となってよいのだろうか、等々精神的に平常ではいられなくなるのだ。

 もっとも最近の若手は、そういうことを考える棋士と、そうでない棋士、すなわち将棋は強い方が勝つゲームだと割り切って、対局に臨める棋士に分かれるような気がするのだ。初挑戦でタイトルが取れる棋士は、後者のタイプであろう。

関連ニュース