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【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】ユネスコ遺産「スイスの雪崩保護」 地震より防護策とりやすい雪崩 (2/2ページ)

 犠牲者の数では雪崩は、アイスランドに多い火山噴火や地震の犠牲者よりも多い。

 アイスランド北端の寒村、シグルフィヨルドゥールに海底地震観測のために行ったことがある。1年を通して平均気温はマイナス4度から11度で、15度を超えることはめったにない寒村だ。ニシン漁で暮らしている。

 ここでは1919年に大きな雪崩が起きて水産加工場を海へ押し流して19人の犠牲者を生んだ。それだけでなくて、雪崩が津波を生み、フィヨルドの対岸にも被害を及ぼした。

 シグルフィヨルドゥールは人口1300人。アイスランド北部にあるフィヨルドに面した村で、フィヨルド沿いの狭い場所にしか住めない。まわりは高さ800メートルにも及ぶ山に囲まれて雪も多い。その村を大きな雪崩が襲ったのである。

 アイスランドの北部は雪崩が多く、被害が絶えなかった。このため、シグルフィヨルドゥールでは雪崩が集落を避けるような巨大な溝を掘る土木工事が最近行われて、ようやく人々は安心して冬を過ごせるようになった。雪崩は人工的に掘った溝に沿って流れるので、下の集落を襲わなくなった。

 雪崩は年ごとに規模こそ違え起きる場所が決まっている。それゆえ防護策もとりやすい。

 その意味では場所も時間も不意打ちで起きる地震よりは始末がいい。地震予知がユネスコの無形文化遺産になって栄誉を与えられるのは、どのくらい先だろう。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『完全解説 日本の火山噴火』(秀和システム)。

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