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コロナワクチン 出遅れた日本、問われる国産化

 新型コロナウイルス対策の切り札として期待が高いワクチンの開発が、各国で大詰めに近づいてきた。だが、日本勢は大きく出遅れており、国産ワクチン開発の意義が問われている。

 世界保健機関(WHO)によると、世界で38件のワクチン候補が治験に入り、米英中などの9件が最終段階に到達。先行する製薬大手の英アストラゼネカは年内の実用化を目指す。

 一方、日本勢も多くの企業が開発中だが、大阪大発のベンチャーであるアンジェスなど2社が初期段階の治験に入っただけ。実用化は早くても来春で、大半は数年後の見通しだ。

 大阪大の宮坂昌之名誉教授(免疫学)は「重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)が流行し、対応した経験がある海外はすぐに開発を始められたが、知見のない日本は迅速に動けなかった」と分析する。

 こうした状況から政府は米ファイザーとアストラゼネカから大量供給を受ける基本合意を取りつけた。医療関係者からは「海外製でもワクチンさえあればいい」との声も聞かれる。

 だが、東京農工大の水谷哲也教授(ウイルス学)は「国内で開発することに重要な意味がある」と指摘する。ワクチンは人種によって異なる反応が出る恐れがあり、海外で実用化しても日本人に安全で有効かどうかは分からない。米欧2社が日本で最終段階の治験を行うかは不明だ。感染拡大で自国の需要が増し、日本への供給が途絶えることもあり得る。水谷氏は「自国民に適したワクチンを自国で供給できる態勢の確立が大切だ」と強調する。

 コロナ禍を乗り越えたとしても、新たな感染症は今後も襲ってくる。その際に役立つ知見を蓄積しておくためにも、国産ワクチンの開発は重要な意味を持つ。(産経新聞 伊藤壽一郎)

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