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【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】世界で一番深く掘られた穴 地球物理学の常識をくつがえした「コラ半島」の掘削 (1/2ページ)

 さびた鉄材が散らばった中に、12本のボルトで密封された蓋がある。いまは廃虚になっているが、この穴の深さは世界一で12キロメートルもある。

 この穴はロシアの北西部にあるコラ半島ムルマンスク市の近くで20年間、掘り続けられた。江戸時代に禅海和尚が30年かかって掘り抜いた大分の「青の洞門」に匹敵する気の長さだ。

 掘削は深くなるほど大変で時間もかかる。だが高い温度は想定外の大敵だった。深さ15キロメートルをめざしていたが、深さ12キロメートルでの温度が180度にも達し、当初予想していた温度よりも80度も高温だったために、通過することができなかった。結局、1994年に12キロメートルで打ち止めになった。

 しかしこの深さは世界一で、いまだにこの記録は破られていない。

 コラ半島の掘削は純粋に地球物理学のための実験で、ロシア(旧ソ連)の国内だけで3000人もの科学者が関与した大がかりなものだった。

 掘削の結果は、いままでの地球物理学の常識をいくつもくつがえした。

 いちばん違ったのは岩の種類だった。もともとコラ半島が選ばれたのは古い大陸の安定した地殻の見本のようなところで、その地下も教科書に載っているような典型的な大陸の地殻構造だからだった。つまり、花崗(かこう)岩質の層が玄武岩質の層に乗っている構造だ。岩質も弾性波の速度も違う。

 世界中の大陸の地下も、弾性波の速度から、ほぼ同じ構造だと思われている。大陸プレートの典型である。コラ半島では、その2つの層の境は7キロメートルだと推測されていた。つまりこの掘削で掘り抜ける深さのはずだった。

 その境とはどんなものか、なぜそこにそんな境があるのかは、よく分かってはいない。解明されるはずの謎解きに世界の期待が集まっていた。

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